ゼロ水準に戻っても、必ず利食えるというわけではない
前回の続きです。
ただ、MACDがゼロ水準に戻ったとしても、必ず利食えるわけではないという点は留意しておくべきです。
移動平均線との乖離の縮小は、株価の下落、もしくは上昇によって調整される場合と、時間の経過によって調整される場合があります。
たとえば、下記の図表1のチャートのように急騰した株価が高値保ち合いを形成するなか、移動平均線がジリジリと上昇して、株価との距離が接近し、やがて乖離が解消されるパターンは、時間の経過によって調整される典型例です。
[図表1] 時間の経過によって乖離が調整されるケース(日経225日足チャートと100日移動平均線)
こういう場合は、たとえ利食い水準ではなかったとしても、乖離が解消された時点でしっかり反対売買を行なってポジションをフラットにしておくことが大切です。なぜなら、株価の下落ではなく、時間経過によって調整されたということは、それだけトレンドが強く、買いが入り続けており、高値水準で売りをこなしているとみることもできるからです。その状態で乖離の調整が完了し、次の上昇サイクルに入られると、売り手は大損を被る可能性があります。
また、株価の下落による調整が十分にある場合でも、持っているポジションをある程度は利食うようにしていました。
そのまま突き抜ければ利益を伸ばすことができますが、MACDがマイナス圏に乖離を広げるのは、株価が移動平均線を割り込み、トレンドが大きく変化する局面になったという場合のみで、移動平均線近辺で調整を完了して再度、株価が上昇する可能性もあります。そうなったとしても、チェック・ポイントである程度の利益を確定しておけば、最悪、同値で買い戻すことにより利益を残せます。これは「利を損にしない」ための、ポジション・コントロールの一つの方法です。
トレンド反転の可能性を判断する「ダイバージェンス」
チェック・ポイントで、ポジションを残したまま引っ張るかどうかは、トレンドが反転する可能性がどれだけあるのかを、MACDを含むテクニカル指標によって判断します。そこで鍵になるのが「ダイバージェンス」です。
ダイバージェンスとは、下記の図表2(対象期間が長かったため週足にしています)に示すように、「株価自体は前回の高値を抜けていたとしても、MACDが前回の高値水準を上回ることができていないままサインが発生すること」です。こうしたときに、トレンド自体が大きく変化するケースが多く見受けられたため、少なくとも調整がある程度大きな幅のものになるか、トレンド自体の変化につながる場合が多いと考えていました。
[図表2]ダイバージェンスの例(日経225週足チャートとMACD)
図表2では、日経225は2006年4月につけた17563.37円を、2007年春と夏に上回っていますが、同じ時期のMACDは2006 年4 月の水準を大きく下回っていました。同じような現象は、2006年2月の高値と2006年4月の高値時の比較においても発生しています。このように「株価自体が高値を更新していても、MACDが追いついていない」という状況は、その上昇エネルギーが減退していることを示しています。
一方、ロスカット・ラインについては、株価水準で決めるのではなく、MACDによる反対売買のサインが発生したタイミングで必ずロスカットするようにしていました。少なくともMACDの乖離が十分に拡大しているポイントでポジションをとっている限り、ロスカットは頻発しないはずです。にもかかわらず、利食い水準まで十分に達しない状態で、サインが発生した場合は、トレンドが非常に強く、時間の経過による調整完了後にさらなる上昇を続ける可能性が高いため、そこでいったんポジションをフラットにしておく必要があるのです。