本連載は、業界屈指の自己売買部門を持つことで知られる山和証券の執行役員ディーリング部長・工藤哲哉氏の著書、『百戦錬磨のディーリング部長が伝授する「株式ディーラー」プロの実践教本』(日本実業出版社)から一部を抜粋し、スイングトレードで利益を出すプロの技を直伝します。

高速取引と競わずに済む、「時間軸が長い」取引

日計りなど超短期取引の目的は、短時間内の値動きのブレをとりにいくことにあります。これは、より高速な取引環境を持つHFTが得意とする、優位な土俵です。

 

一方、HFTは基本的に日計りであり、オーバーナイトリスクを好みません。不確実性を嫌い、単純な取引を好む傾向があります。ですから、スイングトレードのように取引の時間軸が長くなると、取引に際して事前にチェックするべき要素が増え、取引は複雑化する一方、HFTなど高速取引を得意とする市場参加者とは違うところで利益を得ることができるというメリットがあります。

 

つまり、「相場の流れ」や「株価水準が持つ意味」、「さまざまな材料」を考慮し、予測する必要がある「時間軸が長い取引」を選択すれば、HFTなどシステマチックな高速取引を行なう投資家とは、同じ土俵で戦わずに済むようになります。

 

スイングトレードは、「①情報収集→②分析→③判断」の各プロセスにおいて、超短期売買とはまた求められるものが変わってきます。具体的に、どのような準備や取り組みが必要になるのかということついて、以下では私が日々行なっていたルーティーンをまとめてみました。

日計りと比べ、綿密な情報収集・分析が必要になる

当然のことですが、トレードの時間軸が伸びるほど、チェックするべき事柄が増えます。たとえば、日計りではそれほど欧米市場の動きを意識せずに済みますが、スイングトレードの場合は、欧米市場が開いている時間帯もポジションを持ち続けるわけですから、欧米市場の動向予測は必要不可欠です。為替や金利など、株式市場以外の市場動向も、日計りに比べてより深く考察する必要があります。国内だけではなく、海外も含めた一定期間の経済統計やイベントなどを把握し、市場コンセンサスを調べ、自分でもきちんと予測を立てることが大切です。

 

さらに株式市場の需給分析も、日計りに比べて重要になってきます。投資主体別売買動向や裁定残、信用残といった需給データは、誰でも簡単にインターネットからダウンロードできるので、それらの数字は常に注目しておきましょう。

 

ファンダメンタルズ面では、決算発表などのスケジュールを把握し、市場コンセンサスを調べることが大切です。

 

いずれも極めて基礎的な情報ばかりですが、それをきちんと集めて事前に分析することが、スイングトレードでは重要になってきます。

 

また、テクニカル分析もスイングトレードまでは十分に有効に機能すると思います。ただ、見るべきチャートの時間軸は違ってきます。日計りでは5分足や10分足を使っていましたが、スイングトレードでは日足のように、長めの時間軸で判断するようにします。チャートを用いるうえで大切なことは、自分が実行しようとしている取引の時間軸にマッチしたものを使うことです。ここがミスマッチを起こしていると、エントリーする際のタイミングなどが、まったくかみ合わなくなります。

 

このように、日計りでは意識せずに済んだことでも、スイングトレードになると、より長い時間、リスクを保有することになるため、チェックしておかなければならなくなります。

 

それを面倒だと思う人もいると思いますが、やはり情報収集や分析プロセスをしっかりと行ない、相場の先行きを予測することで、勝率を一段と高めることができます。

本連載は、投資を促したり、特定のサービスへの勧誘を目的としたものではございません。また、投資にはリスクがあります。投資はリスクを十分に考慮し、読者の判断で行ってください。なお、執筆者、製作者、日本実業出版社、幻冬舎グループは、本連載の情報によって生じた一切の損害の責任を負いません。

百戦錬磨のディーリング部長が伝授する 「株式ディーラー」プロの実践教本

百戦錬磨のディーリング部長が伝授する 「株式ディーラー」プロの実践教本

工藤 哲哉

日本実業出版社

プロは何を考え、どうやってトレードをしているのか? 取引における日計り、スイング、中長期の具体的なテクニックからメンタルなど、「株式ディーラー」プロの戦略を伝授。 個人投資家にも大いに役立つ情報が満載の一冊です…

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