生命保険の契約自体も「相続財産」に含まれる
保険金自体は、相続税の申告から漏れることはまずありませんが、たとえば、前回の例2のように保険料の負担者と受取人が一致している場合で、かつ被保険者である夫よりも先に、保険料を支払っていた妻が亡くなった場合には要注意です。「生命保険契約の権利」が申告から漏れるケースが多々あるからです。
どういうことか説明しましょう。生命保険金は当然相続財産ですが、実は、生命保険の契約それ自体も相続財産に含まれるのです。この契約の権利を保持するのは、保険料の負担者であるとされています。例2のケースでいえば、夫の保険契約の権利は、保険料を負担していた妻が持っているわけです。よってこの保険契約の権利は妻の相続財産としてカウントされます。「みなし相続財産」といわれるものです。
生命保険契約の権利を財産として評価する場合、その評価額は「保険契約の権利の保持者(例2の場合は妻)の死亡当日に生命保険を解約した場合の解約返戻金」になります。解約せずに名義を変更するだけの場合でも、その時点での解約返戻金が相続財産となります。詳しいことは、契約している生命保険会社に問い合わせたほうが安心です。
この「生命保険契約の権利」は申告漏れが発生しやすいため、注意が必要です。税理士でも知らない人がいるくらいです。当然税務調査でも指摘されやすいので気をつけましょう。
家族が保険契約の存在を知らないケースも・・・
また、被保険者と保険料の負担者が一致している場合、まれにですが、被保険者の死亡に気づかぬまま死後も契約が続いている、というケースがあります。毎月保険料を支払っていれば、保険会社としても支払いが滞ることで保険料負担者の死亡に気づけますし、また相続人としても、銀行の取引履歴で保険の存在を知ることができます。しかしたとえば、契約時に一括で保険料を支払った場合などでは、保険会社も相続人もなかなか気づけないのです。
事例としてはそれほど多くないのですが、近年は一人暮らしの高齢者が増えていることもあり、家族が保険契約の存在を知らないケースが増加しているようです。
生命保険に関しては、まず「保険金負担者・被保険者・保険金受取人」を見直し、どういった税が課されるのか、もし保険料の負担者が亡くなった場合、「生命保険契約の権利」の相続が発生するのかをしっかり見直しておくことが重要です。