「大型株」「高PER株」には通用しない!?
実は、「利益2倍・株価4倍」の法則が当てはまらない株があることも知っておいてください。
それは、本連載の第6回で紹介した下記図表1の逆側に該当する大型株や高PER株です。これらの株式は、たとえ利益が2倍になったとしてもこの法則が通用しません。
[図表1]規模効果とバリュー株効果
具体的な事例を挙げてみます。日本で現在、時価総額が最も大きい会社はトヨタ自動車(7203)です。時価総額は約20兆円もあり、ダントツの1位です。トヨタ自動車の業績はリーマンショック以降、景気回復の波に乗り、過去5期連続で増収増益となっています。下記図表2、3をご覧ください。
[図表2]トヨタ自動車の過去5期の売上高、純利益額推移
[図表3]トヨタ自動車の5年間チャート
2012年から2016年にかけて売上高、利益ともにきれいな右肩上がりで、2015〜2016年度の売上高を除いては、年率10%以上の成長率です。利益面においては2012年から2016年にかけて約8倍に、2013年から2016年にかけては2.4倍になっています。ここで、「利益2倍・株価4倍」の法則を適用したとします。単純に計算すると、2013年にトヨタ自動車の株式を保有していたら、株価は5.76倍に、2012年からであれば64倍になっていることになります。
実際は2012年から保有を開始していたとしても、株価は2000円台から最高の8000円台までにしかならず、2013年度以降であれば、株価は4000円台まで上昇しています。利益が2倍になっても、株価は4倍どころか2倍程度までしか上昇していません。
小型株で割安な会社は、企業の成長余力が大きい割に知名度は低く、将来的には資金力のある機関投資家に買われるチャンスがあります。しかし、すでに企業成長を果たした大企業がさらに成長するためには、膨大なエネルギーと新たなマーケット、株価を押し上げるための資金が必要なのです。
株価の上昇スピードが速い「小型株」
トヨタ自動車の時価総額は約20兆円と説明しましたが、株価を2倍にするためには、この時価総額を2倍にしなければいけません。一方、小型株の場合、時価総額が200億円程度という会社がたくさんありますし、20億円という会社も存在しています。どちらの株価の上昇スピードが速いかは一目瞭然です。
その他、過去に赤字を出した企業は「利益2倍・株価4倍」の法則が当てはまらない株式に該当します。赤字から黒字に回復し、さらに利益が拡大していく企業の成長ストーリーに乗って株価が拡大していくことは当然ありますし、その過程で株価が何倍にも膨らんだりする会社はあります。しかし、赤字を出した会社の場合、「再度赤字を出すかもしれない」という投資家の不安要素が出てきます。また、企業の収益力がそもそも低いから赤字になるという高リスクから、中長期で株価も順調に伸びるというよりも、仕手株的な急変動を起こすことが多くなります。