新規出店ペースが拡大する企業は「出店計画」で把握
成長段階①新規出店の拡大
小売業は大きく分けて3つの成長段階があります。
1つ目は新規出店の拡大と同時に、企業の成長軌道に乗る投資です。小売業は商品やサービスを売る店舗や、販売機会を増やせば増やすほど、売上高と利益は伸びていきます。基本的にはひとつの成功事例をくり返すだけでいいのです。たとえば、あるカツ丼店が名古屋で味噌カツの展開に成功したとします。これを、東京でも同じ味で出店していけばいいということです。
また、小売業は出店スピードが拡大していくケースがほとんどです。初年度は新規出店が20店舗だとしても、数年後には新規出店目標が50店、100店となる企業が多くあります。こうなると、利益と株価はものすごいペースで上昇していくことが想像できると思います。新規出店ペースが拡大していく企業は、「出店計画」(前回参照)でほぼ把握することができます。
もう1つ知っておいてほしいポイントは、出店担当の社員を増加させた企業に注目すべきだということです。私が過去に保有した会社で、出店担当者が1人しかいない企業がありました。その年は新規出店計画が10店舗なのに対して、実際には1〜4店ほどしか出店できていませんでした。業績もほとんど伸びませんでしたが、翌年に出店担当者が3人に増えたところ、その年は予定通り10店新規出店、そこから業績が一気に向上したといったことがありました。
成長段階②利益率の向上
成長段階の2つ目は、利益率の向上です。
小売店の場合、年100店舗以上の新規出店をしていくと、さすがに成長が鈍化していきます。あくまでも目安ですが、国内で1000店舗を超えてくると、新規出店する場所がなくなってくるようです。出店しても二等地になるなど、売上や利益も少なくなります。
コンビニのように、店舗が1万を超えても成長していくケースもありますが、出店場所が減ってくると、企業は第2の成長戦略として利益率の向上を狙います。言い換えれば、ブランド化です。
具体的には、「既存の看板商品の単価を上げる」「看板商品よりも価格が高い新商品を売り出していく」といったことになります。小売業は多くの消費者に商品を提供しているため、1つの値段は小さくても、客単価を1%上げるだけでも相当なインパクトになるのです。成長する会社はこうした施策を何度もくり返すことで着実に利益率が向上していきますし、それと同時にコスト削減策も積極的に行なっています。
コスト削減策で印象に残っている会社が、餃子の王将(9936)です。同社の会社説明会で新工場を作るという発表がありました。同社には「餃子1日100万個」というCMがありますが、これは看板商品の餃子を各店舗ですべて手作りしての数字です。これらをすべて機械で作るという発表だったのです。これが実現すれば、人件費を相当減らせるようになるでしょう。客単価を増やしながらコストを削減することで、利益を伸ばしていくという戦略でした。
「店舗が拡大している段階」が投資のベストタイミング
成長戦略③新しい業態への進出
成長段階の3つ目は、新しい業態への進出です。
たとえばアパレル店の場合、新しいブランドを立ち上げ、今までとは違う年齢層を取り込もうとします。飲食店の場合であれば、高級な和食チェーン店を経営していた会社が、和食の惣菜店をデパートに新規出店するといったケースもあります。他にも、和食チェーン店を主力事業としながらイタリア料理やラーメン屋を出店するなどして、成長する会社は第2、第3の柱を探す努力を常に行なっています。
今ある主力事業から生み出す利益を維持しながら、新しい業態の種まきをしていくことで、そのなかのひとつでも当たれば、成長戦略の①と②を再度くり返すことができます。こうした事業展開を視野に入れている会社も、もちろんチェックするようにしてください。
ここまで小売業の投資戦略を3段階に分けて説明してきましたが、覚えておいてほしいのは、いずれの段階も5年や7年という長期スパンで成長していくという事実です。すぐに結果が出ることはありません。ということは、「1銘柄でも成長し続けていく企業を発掘できれば大成功できる」ということになります。投資のタイミングとしては、当然のことながら店舗が拡大している段階で投資をスタートさせるのがベストです。ぜひ、成長初期段階の企業を見つけるようにしましょう。