今回は、米国エンダウメントCIOたちの経歴を見ていきます。※本連載では、株式会社GCIアセット・マネジメント、投資信託事業グループの執行役員である太田創氏が、「米国名門大学のエンダウメント投資戦略」とは何かを、初心者にもわかりやすく説明します。

名門大学の資産運用を司る「最高投資責任者」

エンダウメントは、長期国債分散投資・オルタナティブ投資の活用といったユニークな運用戦略で、長期的に良好なリターンを計上しなければならない投資主体です。名門大学の資産運用を司るわけですから、それぞれのCIO(またはCEO(最高経営責任者))は経験も実績も豊富でないと、とても数兆円になる資金を運用していくことはできません。

 

ということで、今回は米国トップ5のエンダウメントのCIOの経歴を見ていきましょう。

 

<米国トップ5・エンダウメント>

1.ハーバード大学(運用資産:約4兆円)

2.イェール大学(約2.7兆円)

3.テキサス大学(約2.6兆円)

4.スタンフォード大学(約2.4兆円)

5.プリンストン大学(約2.3兆円)

 

 

ハーバード大学エンダウメントのCEOはNarv Narvekar氏です。同氏はハーバード大学を卒業後、ペンシルバニア大学でMBAを取得しました。その後、ウォール街のJPモルガンでデリバティブ取引部門長を務めた後、ペンシルバニア大学及びコロンビア大学エンダウメントの経営職を担っています。その後、2016年12月にハーバード大学エンダウメントのCEOとして招へいされました。目下、他エンダウメントに劣後しているパフォーマンスの向上に取り組んでいるのは、第12回でも紹介いたしました。

 

イェール大学エンダウメントのCIOは、著名なDavid F. Swensen氏です。1980年に同大学で博士号を取得した後にウォール街に身を転じ(リーマン・ブラザース/ソロモン・ブラザーズ)、新しい金融工学を開発することに従事しました。1981年にイェール大学へ戻り、以来教壇に立つとともに、同大学エンダウメントの運用に従事しています。Swensen氏の開発した運用モデルは、「イェール・モデル」と言われ、多くのエンダウメントに大きな影響を与えました。

 

テキサス大学エンダウメントのCIOは、Thomas Britton Harris IV氏です。1980年にTexas A&M Universityを卒業後、テキサスユーティリティーズ、ベライゾンといった産業界で活躍し、その後ヘッジファンドのBridgewaterでCEOを務めています。その後は、テキサス州教職員年金基金のCIOとして2007-2008年の金融危機を乗り越えながら、同基金を7兆円から15兆円まで増やした実績が知られています。こうした実績を背景に、2017年6月からテキサス大学エンダウメントのCIOとして巨大な資産の運用に携わっています。

バレエ・ダンサーから、エンダウメントCIOへ転身

スタンフォード大学エンダウメントのCIOは、Robert F. Wallace氏です。スタンフォード大学を卒業後、すぐには金融界に身を置かず、プロのバレエ・ダンサーとして16年間舞台に立ち続けたユニークな経歴の持ち主です。バレエ引退後にスタンフォード大学エンダウメントで運用に携わり、その後英国の「Alta Advisers」という運用会社でグローバル運用に携わり、2015年3月から同エンダウメントのCEO/CIOとして2兆円を超える資産の運用責任者になっています。

 

プリンストン大学エンダウメントのCIOは、Andy Golden氏です。デューク大学を卒業後、直接ウォール街には行かず、プロ・カメラマンとしてのキャリアを積んでいます。1988年から1993年まで、イェール大学エンダウメントCEO・Swensen氏のもとで、ポートフォリオ・マネジャーとして活躍しました。1995年にGolden氏はプリンストン大学エンダウメントでCEOとなりましたが、1995年から2005年の年間平均リターンは15.6%にものぼり、運用業界から一目を置かれる存在になりました。

 

 

このように、元々金融界で活躍していた人材がエンダウメントでも引き続き運用に携わっている例もあれば、全く分野外から運用業界に転じた例もあります。どちらの経歴も、着実にリターンを上げていかないとならないエンダウメントのCIOには、共通した性格がありそうです。

 

すなわち、探求心が高く、粘り強く泰然自若といったところでしょうか。投資金額の大小にかかわらず、ここでも個人投資家が先人に学べるところはありそうです。

 

(参照:各エンダウメントのホームページ等)

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