前回は、相続を機に愛人の存在が露見してしまう理由などを紹介しました。今回は、そうした最悪の事態を防ぐための「生前のケア」について見ていきます。

生前に愛人関係を解消するのが最善策だが・・・

愛人関係を続けるかどうかは、お互いの気持ち次第ですが、亡くなってしまえばケアすることができません。そのため生前に対策を講じることが大切なのです。最善策は生前に愛人関係を解消して、よりよい経営と家族関係の再構築を図ることです。できるだけ穏便にそうできるように対策を工夫すべきです。

 

一方で愛人が秘密を暴露しようと決心するのは、主に「大切に思ってくれなかった」という怒りが原因と思われます。ですから、愛人の人生に対してきちんとした配慮を示し、もしもの時にも生活に困らないように準備しておけば、家族に暴露される可能性は小さくなるかもしれません。社長の家族とトラブルを起こしても、誰にとってもよいことはないのです。

 

もしできるとすれば、「生前贈与」です。といっても、振り込みなどは記録が残るので、お金を渡す時には現金にすることで、後々に家族への隠しごとがばれるリスクを軽減できるかもしれません。

 

たとえば愛人関係にある女性とお金をやりとりするのに「金庫」をプレゼントした社長がいました。やりすぎかもしれませんが、二人の秘密の関係にはぴったりの贈り物だったのかもしれません。これなら記録が残らないので、家族に知られる危険性がかなり小さくなります。

 

しかし、多額の現金を自分の通帳から引き出したとしても、自分が亡くなった後で、通帳は間違いなく妻がチェックするでしょう。仮に相続税の申告をする場合には、過去三年間の相続人への現金の贈与は、相続財産に加算されます。

 

もし、愛人にお金を渡して三年以内に亡くなったら、通帳をチェックした妻はこのお金は何かと思うでしょうし、税務調査があった場合も必ず聞かれることになるでしょう。大丈夫と思っているかもしれませんが、理由のわからない高額な預金の引き出しは、相続税では一番のチェックポイントなのです。

贈与税の非課税枠を活用する場合、申告までチェック

それでは、「暦年課税方式の贈与の非課税枠」を利用する方法を考えてみましょう。贈与には毎年110万円という非課税枠があり、誰に対する贈与でもこの枠は有効です。また、非課税枠を超えたとしても、贈与税を支払うのは贈与を受けた愛人の側なので、家族に知られることなく処理ができるかもしれません。ただ、きちんと申告をするかどうかには疑問が残りますので、必ず愛人が申告を行ったかチェックしましょう。社長自らが税務署に持っていくのもよいでしょう。

 

税務とは関係ありませんが、別れた後の関係は続けてはいけません。未練がましくお金をちらつかせて会い続けるのは情けないので絶対にやめましょう。女性の側も自己責任の行動の結果を受け止め、浮気性の社長と別れて次の人生に飛び立っていきましょう。

 

愛人が同じ社内にいる場合は、愛人のままでも関係を断ち切った後でも、冷静に仕事ができるとは考えにくいです。よい転職先を見つけて、退職金をたくさん支給して頂き、早く縁を切った方がどちらにとってもよいと思います。愛人も自分の人生は大切にしなければなりませんし、社長も事業に集中しないと、あっという間に業績が下がり後悔することになるでしょう。

本連載は、2015年10月27日刊行の書籍『妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

妻に隠しごとがあるオーナー社長の相続対策

佐野 明彦

幻冬舎メディアコンサルティング

どんな男性も妻や家族に隠し続けていることの一つや二つはあるものです。妻からの理解が得にくいと思って秘密にしている趣味、誰にも存在を教えていない預金口座や現金、借金、あるいは愛人や隠し子、さらには彼らが住んでいる…

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