愛人も妻も、男性が考えているよりも「お金」にシビア
第3回の連載で紹介したモデルケースは、愛人の存在を隠す社長にありがちな話です。普通の生活を送る女性には受け入れがたい話ではありますが、事実として世の中にある話なのです。
生前に何の対策もしなかったため、大きな労力を費やして守ってきた秘密がいとも簡単にばれてしまうのは、社長と愛人の考えに大きなギャップがあるためです。男女間の付き合いには打算的な部分もありますが、お金で割り切りたい関係も人間の感情が関係する以上、そんなに甘いものではありません。
とくに愛人関係のように、寂しさを埋めるだけのつもりで始まった関係でも、いずれ「本物の愛情があるのでは」と考える人がいます。付き合いが長くなるに従い、さまざまな心の交流を積み重ねる中で、そう考えるようになるのですが、男性の対応によっては愛情が憎しみにかわり、事例のような考えに至るのです。
妻にばれていないことをいいことに、月日を重ねた女性に対して甘い考えを抱く男性が多く、いざ自身が亡くなった時にも、愛人と妻がお金のことでトラブルを起こすことを本気で心配していません。社長の世間体や家族との関係に配慮して、存在を明らかにするようなことはしないだろうと想定しているのです。
ところが実際にはそのようなケースはまれです。関係ごとにそれぞれ違いはありますが、結果的に愛人も妻も男性側が考えているよりもはるかに「お金」に対してシビアな対応を図るでしょう。
愛人の「不安定」な立場を考えると・・・
ある意味それは当然のことです。立場を裏返して愛人の側から見るとよくわかります。妻がいながら愛人を作る社長は、基本的に移り気で浮気性です。また、どんな結果を招くのかあまり深刻に考えていません。
他に魅力的な女性が現れると、そちらに気持ちが移ってしまうかもしれません。愛人は雇用契約で守られているわけではないため、いつ関係を切られても法的にそれを止めたり賠償を求めたりすることはできません。社長名義のマンションで暮らしていても、所有者である社長と賃貸契約を結んでいるわけではありませんから、普通の賃貸物件での生活よりも不安定です。
何より前述した通り、愛人関係とは公序良俗に反した行為なのです。法的に保護されない関係ですので、愛人の側から何かしらの賠償請求などできるものではありません。また第3回の連載で触れた「内縁の妻として相続権を・・・」というアドバイスが登場しますが、愛人には相続権などありませんから、社長が亡くなっても何ももらえるものはありません。
多くの愛人はそんな不安定な状況で暮らしているのです。不倫をした相手は、その配偶者の権利を侵害し、他方の配偶者が被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務がある、と判例にもあるように、その行為によって、愛人は妻に慰謝料を請求されることもあるのです。
女性側も愛人のような状況が長く続いてしまったら、愛人としての生活で世間一般の感覚が麻痺してしまい、二人の間に真実の愛があると勘違いしてしまうと、「私も財産をもらうべきだ」と思ってしまうのです。もし何の対策もなく社長が亡くなってしまった場合、社長宅に乗り込んで、せめて社長の家族からお金を得るしかないと考えるのは必然と言えます。
愛人の存在を隠し通すことは実際には不可能に近いことなのです。ご自身のためにも妻にはっきりばれてしまう前にとにかく女性の身になって、関係を解消することを切におすすめします。ではどうしたらうまく解消できるのでしょうか。次回は、その方法について見ていきます。