「ありがとう」ではなく「有難う」という気持ちを伝える
接客には5つの極意がある。これを経営者がしかと心得、社員にきちんと伝えておくことで、あなたの会社の社員は真心のこもった接客を通じて顧客に「愛」を伝えることができる。
接客の極意の最初は、「有難う」という気持ちを相手に伝えること。これに尽きる。
この商品を開発し顧客のもとに届けるまでにどんな「苦難」があったか。顧客が自分たちの商品、あるいはサービスを認めてくれ、この商談が実を結ぶまでにどんな「困難」を乗り越えてきたか。また、たとえば台風で社屋が浸水し納品寸前の商品が全部流されてしまうなど、顧客にも自分たちにも落ち度がないのに思いもかけない「災難」が降りかかったときの悔しさはいかほどか。
こうした「苦難」「困難」「災難」が、つまり「難」が「有」ったからこそ、いまの喜びがある。その気持ちを一言に託したのが「有難う=ありがとう」だ。「有難う」の「難」は苦難の「難」、困難の「難」、災難の「難」だ。この「難」を味わい尽くし、そのうえで乗り越えてきたからこそ、顧客に向かって「有難う」と心からいえるのだ。
だが入社したばかりの若手社員は、「有難う」という言葉の裏にあるこうした苦難や困難、災難を想像することができない。だから「ありがとう」とはいえても、心の底から「有難う」とはいえないのだ。
相手を見る目線にも「自分の気持ち」を乗せていく
接客の極意その2は、接客する際の目線だ。接客する際は常に相手の目を見続けることが肝要だ。目線はけっしてそらさず話しかけることだ。これはただテクニックのことをいっているのではない。私がいいたいのは「心眼」である。
たとえばテレビのニュースなどで映る人の顔だ。自信に溢れ、自分の伝えたいことをしっかりと発言している人の目線は違う。その目にはテレビのカメラしか見えていないはずなのに、その視線はテレビを越えて日本中の人びとを射ている。相手の気持ちをそらさない目線、これが「心眼」だ。
それに対してこうした「心眼」をもたない人の目は宙をさまよい、テレビを見ている人には自信なさげに映る。
接客する際も同様である。目線をそらせば、それは自信のなさ、あるいは関心のなさを相手に伝えることになる。それではだめだ。やはり「心眼」とはいかないまでも、一度、応対したら目をそらさず、そこに自分の気持ちを乗せていくことが重要だ。