簡単な仕事で量をこなさせると、新入社員は伸びる
あなたの会社という新しい環境に入ってきた社員は、だれでも次の3段階を経て成長する。それぞれの社員が、いまどの段階にあるのか。経営者は常に把握しておく必要がある。
まず第1段階はこんな言葉で表現できる。
「量を重ねた時間が質をつくる」
とくに学校を出て社会人として働きはじめた新入社員に顕著だが、自分が思ったこと、感じたこと、そして自分が好きなこと以外は、かたくなに拒絶する段階だ。
だれでも経験があると思うが、働きはじめたばかりのころは、周囲のすべてが自分に敵意をもっているように感じられ、硬い鎧で己を守っていないと自分がなくなってしまうような気がするものだ。
同時に自分が周囲の社員にくらべると無能であるように感じられ、しまいには自分なんかがなぜこの会社に採用されたのだろうとまで考えるようになる。
高い自己愛(プライド)と極端に低い自己評価の間で絶えず苦しんでいるのがこの段階にいる社員である。そのため彼らの口からは、こんな言葉が頻繁にこぼれる。
「わかりません」「できません」「無理です」「だめです」「好きではないです」
この段階にいる社員は、仕事に必要な能力を何ももっていない。それは当然のことで、周囲もそれをとがめ立てたりはしないのだが、彼らは自分たちの能力の低さに打ちのめされてしまう。ここで重要なことは、簡単な仕事でいいから、とにかく量をこなすように仕向けることだ。
「言葉はいいから黙って手を動かせ」
こうした上司の言葉の意味がわかったとき、彼らの中で質の変化を促すことになる。
反発の裏に潜む「羞恥心」に気づかせることが重要
ある程度の「量」をこなせるようになった社員が到達する次の段階には、こんな言葉がふさわしい。
「質の変化が、さらなる量を生む」
この段階になると第1段階の「わかりません」「できません」から一転、「なぜそうするんですか」「そんなことをする必要があるんですか」と、上司の指示や依頼にすぐに反発するようになる。
この段階の社員を理解するうえでのキーワードは「羞恥心」だ。指示や依頼に「できない」とこたえてしまうのが恥ずかしいと感じる気持ちがあるから、恥ずかしいという気持ちを見透かされないように、あえて「なぜそうするんですか」「そんなことをする必要があるんですか」と質問するかたちをとる。そこを自覚させれば、社員は大きく変わる。