今回は、親族外承継(M&A)における「譲渡所得に係る所得税」の計算法を説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

株式の譲渡益は、条件により「損益通算」が可能

個人株主が非上場会社の株式を譲渡し、利益が発生した場合は、譲渡所得として申告分離課税となる。この際の株式の譲渡益(=譲渡所得)の金額は以下のように計算される。

 

総収入金額(取引価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=株式等に係る譲渡所得等の金額

 

その際の税率は、20%(所得税15%、住民税5%)である。ただし、平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになっている。

 

なお、株式の譲渡益は、他の株式譲渡で譲渡損を出している場合には損益通算することができる。

 

これに対して、譲渡損が発生した場合には、損失がなかったものとみなされるため、給与所得や事業所得等の他の課税所得と相殺することはできない。申告分離課税であるため、他の株式譲渡で譲渡益が出ている場合のみ損益通算することができる。

株式の取得に要した1単位当たりの価額=「取得費」

取得費(取得価額)は、株式等を取得したときに支払った払込代金や購入代金であるが、購入手数料のほか購入時の名義書換料などその株式等を取得するために要した費用も含まれる。払込みや購入以外の方法による株式の主な取得原因とそれに係る取得費は次のとおりである。

 

①相続、遺贈又は贈与により取得した場合は、被相続人、遺贈者又は贈与者の取得費を引き継ぐ。相続後3年以内に譲渡した場合には、当該株式の相続税額を加算することできる。ただし、確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を添付する必要がある。

 

②発行法人から与えられた権利の行使によって取得した株式については、その権利行使価格が取得費となる。

 

③発行法人の株主等として与えられた新たな払込みや給付を要しないで取得した株式の取得費はゼロである。

 

④上記①から③以外の方法により取得した株式の取得費は、その取得の時におけるその株式の取得のために通常要する価額である。

 

取得費とは、株式の取得に要した1単位当たりの価額のことをいうが、株式分割または株式併合が行われた場合や、合併や株式交換などの組織再編により新株が発行された場合、その1単位当たりの価額の調整を行う。

 

また、同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入し、その株式等の一部を譲渡した場合の取得費は、総平均法に準ずる方法によって求めた1単位当たりの価額を基に計算することになる。

 

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