今回は、非上場株式の「法人税法上の時価」による評価法について説明します。※本連載では、島津会計税理士法人東京事務所長、事業承継コンサルティング株式会社代表取締役で、公認会計士/税理士として活躍する岸田康雄氏が、中小企業経営者のための「親族外」事業承継の進め方を説明します。

譲渡側が法人なら、法人税法上の時価での評価が基本に

非上場株式を譲渡する当事者が法人の場合、法人税法上の時価によって評価することが基本となる。この場合の原則的な取扱いは、法人税法基本通達9-1-13(上場有価証券等以外の株式の価額)に規定されている。

 

また、特例として、相続税法上の時価を援用した条件付き計算方法が法人税法基本通達9-1-14(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)に規定されている。

 

法人税法基本通達9-1-13(上場有価証券等以外の株式の価額)

 

上場有価証券等以外の株式につき法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定を適用する場合の当該株式の価額は、次の区分に応じ、次による。

 

(1) 売買実例のあるもの

当該事業年度終了の日前6月間において売買の行われたもののうち適正と認められるものの価額

 

(2) 公開途上にある株式(金融商品取引所が内閣総理大臣に対して株式の上場の届出を行うことを明らかにした日から上場の日の前日までのその株式)で、当該株式の上場に際して株式の公募又は売出し(以下9-1-13において「公募等」という。)が行われるもの((1)に該当するものを除く。)

金融商品取引所の内規によって行われる入札により決定される入札後の公募等の価格等を参酌して通常取引されると認められる価額

 

(3) 売買実例のないものでその株式を発行する法人と事業の種類、規模、収益の状況等が類似する他の法人の株式の価額があるもの((2)に該当するものを除く。) 

当該価額に比準して推定した価額

 

(4) (1)から(3)までに該当しないもの 

当該事業年度終了の日又は同日に最も近い日におけるその株式の発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額

 

原則となる評価方法はこのように規定されてはいるものの、非上場株式の譲渡のうち、売買実例のあるものや公開途上にあるものはわずかであるため、一般的には「純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」によって時価を判定していくことになる。しかし、この価額の具体的な計算方法が明確ではない。

 

そこで、「純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」の具体的な取扱いを明らかにするため、財産評価基本通達を援用する規定が設けられている。これが、法人税法基本通達9-1-14(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)であり、次のように、一定の条件の下に、財産評価基本通達を援用して計算した評価額を時価とすることを認めている。

 

法人税法基本通達9-1-14(上場有価証券等以外の株式の価額の特例)

 

法人が、上場有価証券等以外の株式(9-1-13の(1)及び(2)に該当するものを除く。)について法第33条第2項《資産の評価換えによる評価損の損金算入》の規定を適用する場合において、事業年度終了の時における当該株式の価額につき「財産評価基本通達」の178から189-7まで《取引相場のない株式の評価》の例によって算定した価額によっているときは、課税上弊害がない限り、次によることを条件としてこれを認める。

 

(1) 当該株式の価額につき財産評価基本通達179の例により算定する場合 (同通達189-3の(1)において同通達179に準じて算定する場合を含む。)において、当該法人が当該株式の発行会社にとって同通達188の(2)に定める「中心的な同族株主」に該当するときは、当該発行会社は常に同通達178に定める「小会社」に該当するものとしてその例によること。

 

(2) 当該株式の発行会社が土地(土地の上に存する権利を含む。)又は金融商品取引所に上場されている有価証券を有しているときは、財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、これらの資産については当該事業年度終了の時における価額によること。

 

(3) 財産評価基本通達185の本文に定める「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」の計算に当たり、同通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額は控除しないこと。

 

法人税相当額の控除については、財産評価基本通達は会社の清算を前提にしているため控除するが、法人税の計算上は継続企業を前提としているため、控除しない。

 

また、(2)において土地の評価について規定されているが、建物に関する規定は設けられていない。したがって、土地については常に「通常の取引価額」で評価するが、建物については3年以内に取得したものは「通常の取引価額」で評価し、3年超保有するものについては相続税評価を行う点に注意すべきである。

 

さらに、貸家建付地を保有する場合、「借地権×借家権」の減額調整できるかどうかについて規定がないが、実務上は減額調整しないケースが多い。

法人が当事者となる場合も、取得後の株式数で判定可

なお、財産評価基本通達では、同族株主の判定にあたり、取得後の株式数によって判定することになるが、法人が当事者となる株式譲渡の場合でも原則として取得後の株式数で判定してもよいこととなっている。

 

ここで財産評価基本通達178の「小会社」の評価方式を確認しておくと、以下の通りである。

 

財産評価基本通達178条・179条(小会社の評価)

 

178 取引相場のない株式の価額は、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」という。)が次の表の大会社、中会社又は小会社のいずれに該当するかに応じて、それぞれ次項の定めによって評価する。ただし、同族株主以外の株主等が取得した株式又は特定の評価会社の株式の価額は、それぞれ188≪同族株主以外の株主等が取得した株式≫又は189≪特定の評価会社の株式≫の定めによって評価する。

(表は省略)

 

179 前項により区分された大会社、中会社及び小会社の株式の価額は、それぞれ次による。(省略)

 

(3)小会社の株式の価額は、1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)によって評価する。ただし、納税義務者の選択により、Lを0.50として(2)の算式により計算した金額によって評価することができる。

 

【(2)の算式】

類似業種比準価額×L + 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)

 

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