前回は、納税資金不足に陥った際の解決策を事例を参考に説明しました。今回は、父から相続した不動産を金融機関から紹介された不動産会社に任せた結果、損をしてしまった事例を紹介します。

銀行に紹介された不動産会社に、土地の売却を一任

<事例4>相続で取得した不動産を売却して損をしたAさん

 

Aさんは、千葉県にて代々農家を営む家系の長男として生まれました。一人っ子で、何不自由なく育てられ、父親に習って農業を引き継ぐ予定でした。しかし、平成に入り、農業で生計を立てるのが厳しくなるなか、お父さんが突然亡くなってしまったのです。

 

[図表]相続関係図

 

幸い、相続人は母親と長男であるAさんだけ。Aさんの妻は養子縁組しておらず、揉もめる要素はありません。しかし、それなりの規模の不動産があるため、5000万円を超える相続税の支払いが必要でした。

 

お父さんは、不動産は多く残してくれたものの、現金は農業による経営の厳しさもあり、1000万円しか残っていませんでした。Aさんの手元資金を考慮しても、相続税の納税には3000万円足りません。困ったAさんは、古くからお付き合いのあった金融機関から紹介してもらった不動産会社に、不動産売却の相談をしました。

 

その不動産会社は、それなりに地元では名の知られている会社でした。金融機関からの紹介ということもあり、安心したAさん。不動産会社からの提案どおり、どんどん話を進めていきました。結果として、自宅の横の不動産を5000万円以上で売却することに成功。相続税の納税をしても余るほどの結果となり、一安心でした。

有効活用できる土地まで、安く売り飛ばされてしまい・・・

その後、数か月が経過して、Aさんのご友人を通して私をご紹介いただきました。もともとは相続税の還付請求に係るご相談だったのですが、相続税納税のために不動産を売却したと聞いて気になった私。よくよく聞いてみると、不動産会社に任せきっていて、相場もご自身でそれほど調べずに話を進めていたとのこと。自宅の隣地を売却したというのも気になり、無料で調査させていただいたのですが、買主が不動産会社らしく、相場より低い金額で売却をされていたことがわかったのです。

 

そもそも対象不動産は500平米の土地なので、個人でも十分に購入可能です。にもかかわらず、不動産会社の買取となった。かつ自宅の隣地を売却してしまったというのが失敗だと感じました。

 

自宅の隣地ということは、自宅の一部としても活用可能です。今後、自宅に賃貸併用住宅を建築する、自宅を建て替えるなどの選択が出てきた際、隣地も一体活用できるとなると選択の幅は広がります。しかしAさんは、その選択を検討することもなく売却してしまいました。

 

このような選択ができることの検討をせず、リスクを説明しない不動産会社も悪いのですが、すでに時遅し。過去に戻ることはできず、隣地には密集して建てられた建売住宅が5棟も建つことになり、住んでいて圧迫感を感じることになりました。反対側に住む方からも景観が悪くなったと言われ、関係も少しギクシャクしてしまったとのことでした。

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石川 宗徳,森田 努,島根 猛,佐藤 良久,近藤 俊之,幾島 光子

幻冬舎メディアコンサルティング

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