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納税資金が足りない!? 総額30億円の不動産を相続した事例②

前回は、時価総額30億円の不動産の相続に伴い、納税資金不足に陥った事例を紹介しました。今回は、その問題の解決策とともに、相続対策のポイントを解説していきます。

実際にいくら足りないのか? 納税法はどうするか?

前回の続きです。

 

まずは、論点を整理することから始めます。

 

〈佐藤さんのケースにおける論点〉

 

①相続税の納税資金が足りないことは、おおよそ見当がつくが、実際にどれくらい足りないのか。

 

②相続税の納税については、どのような方法をとるか。すなわち、現金で全額を一括して納付するか、分割払い(延納)にするか、相続で取得した財産で納税(物納)するか。

 

③現金で一括して納付する方法を選択したとき、現金をどのように用意するか。すなわち、相続人が所有している金融資産から支払うか、銀行から借入を行なうか、相続した不動産や相続人が所有している不動産を売却して現金を用意するか。

 

次に、これらについて結論を出す(解決する)ためにしなければならないことを明確にします。

 

〈論点を解決するためにすべきこと〉

 

①相続税の納税資金が足りないことは、おおよそ見当がつくが、実際にどれくらい足りないのか。

 

●相続財産について財産評価を行ない、相続税額を計算する。

 

●相続税以外にかかる費用を見積もる(不動産の名義変更、相続税申告に係る税理士報酬、司法書士や弁護士を遺言執行者とした場合の執行報酬など)。

 

●相続人の納税後の生活費の算定。

 

②相続税の納税については、どのような方法をとるか。

 

●まずは、現金で一括納付できる方法を検討する。

 

●分割納付(延納)や相続財産で納付(物納)する場合は、適用要件を満たすかどうかを確認する。

 

●物納を選択した場合、どの財産を納めるかを決め、必要な手続きと書類の準備を行なう。

 

③現金で一括して納付する方法を選択したとき、現金をどのように用意するか。

 

●相続した金融資産や相続人が所有する金融資産にて納税することが一番望ましいので、相続財産に預金や有価証券があれば換金する。

 

●銀行からの借入が必要な場合は、担保や融資条件、金利、返済方法について早い段階で相談する(返済条件にもとづくシミュレーションも実施する必要あり)。

 

●相続した不動産を売却する場合、利用状況、収支状況、利回りなどを分析してランク付けを行なう。

様々なシミュレーションの結果、無事納税できたが…

佐藤さんの場合は、お姉さんの生前に相続対策を一切行なっていなかったこともあり、49日の法要を過ぎて相談に来られてからの限られた時間のなかで、多くのことを検討する必要がありました。しかし、そうしたなかでも最優先したのは、佐藤さんにとって、どの方法をとるのが一番有利であるかということです。

 

概して、銀行からお金を借りるにしても、不動産を売却するにしても、納税期限があるというので足元を見られ、決して有利とはいえない条件で進めていかざるを得ないケースも実際にはあります。

 

結果として佐藤さんは、不動産を売却することを選びました。しかし、限られた時間のなかで、しっかりとスケジュールを立て、相続税や不動産の売却に係る税金についてさまざまなシミュレーションを複数回行ない、数字の根拠にもとづいて具体的な筋道を立てられたこと、そして、各専門家がチームを組んで知恵を出し合いながら協力体制をしっかり築いて対応することができたため、幸いにも佐藤さんにとって、非常にいい条件で売却することができ、相続税の納税を無事に済ませることができました。

 

私もそれまでの経験から、相続税や不動産に関する税金の取り扱いにはある程度、自信がありましたので、シミュレーションを複数回行なうことは決して苦ではありませんでした。そして、手前味噌ではありますが、相続税に強い税理士だからこそ、スケジュールどおりに案件を進めることができたと言っても過言ではないと思います。税理士ならば、誰でもできるというわけではありません。

 

とはいえ、相続対策は、いざ相続が発生してからでは、時間に限りがありますので、できることにも限りがあります。やはり、相続が発生する前から、ある程度余裕をもって対策をすることができれば、あたふたすることはありません。

 

佐藤さんについても、もし、佐藤さんのお姉さんと生前からお付き合いがあれば、相続対策をいくつもご提案しながら、できる限りの節税をすることも可能だったでしょう。特に財産額が大きくなればなるほど、節税できる額は大きくなりますので、早めの相談が相続対策の第一歩ではないかと思います。

税理士

24歳で税理士試験に合格し、27歳で税理士登録。実務経験に加え、専門学校の税理士講座で教鞭を執るほか、生命保険の営業も経験。相続税を究めた税理士として、顧客のニーズに沿った親身なオーダーメイドの相続対策を提案。年間150件以上の相続案件に携わる。

著者紹介

汐留司法書士事務所 代表 司法書士

26歳で司法書士試験に合格したのち、登記、相続、裁判、それぞれを得意とする複数の事務所に勤務。独立後は士業の専門家集団である汐留パートナーズグループに参画し、ネットワークを強みに、相続に関するコンサルティングに力を入れる。

著者紹介

一般社団法人さいたま幸せ相談センター 代表理事 不動産鑑定士

不動産鑑定士試験合格後、都内の不動産鑑定事務所において約2年間、主に外資系金融機関に対するバルクセール案件の評価、メガバンク依頼による関連会社間における不動産売買にかかる評価等、年間100件以上の案件を手がける。キャリアを積んだのち、遺言書の作成に向けた個人の不動産鑑定に携わったことでやりがいを感じ、相続案件をメインに手がけるようになる。

著者紹介

一般社団法人さいたま幸せ相続相談センター 代表理事

大学卒業後、不動産売買仲介大手の東急リバブルへ入社。5年間不動産売買仲介業を経験し、その後は都内初の廃校再生事業を含む不動産再生ビジネス事業や、数百億円規模の不動産ファンドの運用、相続コンサルティングを行なう。営業・管理・マーケティング・運用・相続と、不動産に関わる多彩な部門に精通、過去18年間で1000件を超える不動産・相続案件に携わり、不動産・相続を手がける複数の企業や団体で要職を務める。

著者紹介

遺品査定士

ブランド品や宝石、アンティークを中心に、年間10万点を超える査定をこなし、培った真贋力を、生前整理・遺品買取に活かす。“丁寧で根拠のある価格説明”をモットーに、思い入れのある大切な“お品物”の橋渡し役として、常にお客様の目線でサービスを提供している。

著者紹介

株式会社経営承継 代表取締役

会計コンサルタント、IT戦略コンサルタントを経て、大手人材紹介会社に転職。エグゼクティブクラスの採用を担当し、のちに流通・小売専門の人材紹介会社においてエグゼクティブ部門の立ち上げに参画。年間400名の転職希望者との面談を実施した。その後、日本で始めて中小企業の事業承継に関わる後継者紹介サービスを始める。

著者紹介

連載円満相続の実現…事例に学ぶ「大切な資産」の守り方

 

円満相続をかなえる本

円満相続をかなえる本

石川 宗徳,森田 努,島根 猛,佐藤 良久,近藤 俊之,幾島 光子

幻冬舎メディアコンサルティング

「対策が難しい相続」に悩む人に向けてプロフェッショナルが事例とともに分かりやすく解説。大切な資産と人間関係の守り方教えます! 「相続登記と遺言を行なうメリットってなんだろう?」「相続した不動産、売るべき?売らな…

 

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