不動産投資の中でも高い専門性が求められる「ビル」の経営。本連載では、不動産経営コンサルタント・三つ星オフィスビルプロデューサー・不動産鑑定士として活躍する、 釜口浩一氏の著書『これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある』(キョーハンブックス)から一部を抜粋し、ビル経営で長期安定した収益を確保するための基礎知識を解説していきます。

財務分析で不可欠な「B/S、P/L、C/F」の視点

この連載では、ビル経営第四の柱である財務の部分、長期安定した収益を確保するための視点について、説明します(第一から第三の柱については、書籍『これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある』をご覧ください)。

 

貸ビル経営を財務面から分析するとき、3つの視点が必要です。それは、資産と資金調達の視点、損益の視点、それと、現金収支の視点です。

 

これを確認できるのが、B/S、P/L、C/Fです。

事業を行う場合、現金の流れを見る「C/F」が最も重要

簿記などでは、B/S、P/Lの順に学ぶと思います。

 

「B/S」はBalance Sheet(バランス・シート)の略で「貸借対照表」です。資産、つまり、貸ビルでは土地・建物がそれぞれいくらあり、その資金はどこから調達したのかなどを、ある時点、たとえば2015年3月31日時点で確認します。所有するビルのお金をどのように調達したか、そして、含み益(または含み損)を含めた資産価値はどの程度かということを知るのです。

 

[図表1]B/S

 

「P/L」はProfit & Loss Statement(プロフィット&ロス・ステートメント)の略で、「損益計算書」です。一定の期間、たとえば、1年間で考えたときに、収益は何からいくら得ているか、費用は、何にいくらかかっているかがわかります。1年間でいくら儲けたのかということが最終目的です。今後の毎期の損益予測をします。

 

[図表2]P/L

 

「C/F」はCash Flow statement(キャッシュフロー・ステートメント)の略で、現金収支の流れを見るものです。これを使って、どこの時点をみても、現金不足とならないかを確認します。

 

[図表3]C/F

 

将来的な資産目標、たとえば、現在10億円の貸ビルを持っており、他のビルを取得するなどして、これを10年後までに20億円にするという目標を立て、そのための資金調達計画を立てるときなどには、B/Sをどのようにするかという計画が必要ですので、B/Sは重要です。

 

しかし、私は日々の実務上重要な順番は、この逆であると思います。つまり、重要度が最も高いのはC/F、次に、P/L、そしてB/Sの順ということです。

 

事業を行う場合、現金に不足があってはいけません。まずは、この確認を優先すべきです。そして、毎期、黒字の状態を続けられるかという損益状態を確認する。資産の増減は、その結果ということです。

本連載は、2015年9月28日刊行の書籍『これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある』(キョーハンブックス)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある

これからのビル経営 利益を生み続けるための基本がここにある

釜口 浩一

キョーハンブックス

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