今回は、養子縁組による節税メリットについて見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

養子縁組なし、実子2人のみで相続した場合

前回の続きです。

 

⑤養子縁組による節税メリットの例

 

たとえば、相続財産が2億1,000円(死亡保険金3,000万円、その他の財産1億8,000万円)というケースで、実子2人がいたとすると、❶養子縁組をしない場合、❷養子縁組(1人)をした場合で、次のような違いが出てきます。

 

ア)❶養子縁組をしない場合

 

ⅰ)各相続人の課税される財産の価格

 

●死亡保険金2,000万円(500万円×2人が非課税限度額となるため)の2分の1=1,000万円

●その他の財産1億8,000万円の2分の1=9,000万円

 

以上の合計額1億円が、各相続人に課税される財産の価格になります。

 

ⅱ)課税される財産の価格の合計額上記

 

ⅰ)1億円+1億円=2億円が課税される財産の価格の合計額になります。

 

ⅲ)課税遺産総額の計算上記

 

ⅱ)の課税される財産の価格の合計額である2億円から、

●基礎控除額3,000万円+600万円×2人=4,200万円

を控除した、1億5,800万円が課税遺産総額になります。

 

ⅳ)各人の法定相続分に応じた取得財産額

 

上記ⅲ)の課税遺産総額1億5,800万円に各相続人の法定相続分2分の1を掛けた7,900万円が、各相続人の法定相続分に応じた取得財産額になります。

 

ⅴ)税額の算出

 

上記ⅳ)の各相続人の法定相続分に応じた取得財産額は7,900万円ですので、税率は30%、控除額は700万円です。取得財産額にこの税率を掛けると、7,900万円×30%-700万円=1,670万円となります。2人分で3,340万円になりますが、これが相続税の総額になります。

 

各相続人の税額は、「相続税の総額×ⅰ)各相続人の課税される財産の価格÷ⅱ)課税される財産の価格の合計額」で計算されますので、3,340万円×1億円÷2億円=1,670万円が、各相続人の税額になります。

 

ここからいろいろな控除をしたものが各々の納税額になります。

養子縁組あり、実子2人と養子1人が相続した場合

イ)❷養子縁組(1人)をした場合

 

ⅰ)各相続人の課税される財産の価格

 

●死亡保険金1,500万円(500万円×3人が非課税限度額となるため)の3分の1=500万円

●その他の財産1億8,000万円の3分の1=6,000万円

 

以上の合計額6,500万円が、各相続人に課税される財産の価格になります。

 

ⅱ)課税される財産の価格の合計額

 

上記ⅰ)6,500万円×3=1億9,500万円が、課税される財産の価格の合計額になります。

 

ⅲ)課税遺産総額の合計額の計算

 

上記ⅱ)の1億9,500万円から、基礎控除額3,000万円+600万円×3人=4,800万円を控除した1億4,700万円が課税遺産総額になります。

 

ⅳ)各人の法定相続分に応じた取得財産額

 

上記ⅲ)の課税遺産総額の合計額1億4,700万円に各相続人の法定相続分3分の1を掛けた4,900万円が、各相続人の法定相続分に応じた取得財産額になります。

 

ⅴ)税額の算出

 

上記ⅳ)の各相続人の法定相続分に応じた取得財産額は4,900万円ですので、税率は20%、控除額は200万円です。取得財産額にこの税率を掛けると、4,900万円×20%-200万円=780万円となります。この金額の3人分で2,340万円になり、これが相続税の総額になります。

 

各相続人の税額は、「相続税の総額×ⅰ)各相続人の課税される財産の価格÷ⅱ)課税される財産の価格の合計額」で計算されますので、2,340万円×6,500万円÷1億9,500万円=780万円が、各相続人の税額になります。

 

ここからいろいろな控除をしたものが各々の納税額になります。

 

ウ)まとめ

 

❶と❷を比較すると、養子縁組で1人相続人を増やすと、1,670万円-780万円=890万円の節税効果が出ます。

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

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