今回は、子の配偶者を養子にする場合を見ていきます。※本連載は、弁護士である森田茂夫氏、榎本誉氏、田中智美氏、村本拓哉氏の共著『相続に活かす養子縁組』(日本法令)より一部を抜粋し、相続税対策として「養子縁組」を活用する際のポイントを解説していきます。

子の配偶者には「義理の親」の相続権はないが・・・

前回の続きです。

 

②子の配偶者を養子にする場合

 

[図表1]

 

子の配偶者には、子の親の相続権はありません。特に、息子の場合、息子の妻がいくら親に尽くしても、妻には息子の親の相続権はありません。息子が生きているのであれば、(妻が)尽くした親が亡くなっても息子が親の財産を相続しますからまだよいのですが、息子が先に死亡してしまったような場合、その後に親が亡くなっても、息子(夫)と妻の間の子が親を代襲相続するだけで、妻には親の相続権はありません(代襲相続というのは、相続人(この例の息子)が、親の相続開始前に死亡したときに、相続人の子が相続人に代わって相続するという制度をいいます)。

 

特に、息子(夫)と妻の間に子がいない場合、息子が先に死亡した後に親が死亡すれば、子が代襲相続をすることもなく、妻は何も取得することができません(妻には代襲相続権はありません)。このことは、息子の死後、妻がどんなに親に尽くしても同じです。

 

[図表2]

 

このような場合、妻が親の財産を取得する方法としては、次の方法が考えられます。

 

➊親が、息子の嫁に贈与をする

➋親が、息子の嫁に財産を与える遺言をする

➌親が、息子の嫁と死因贈与契約をする

 

ただ、➊のように親が一度に何かの財産を、あるいは毎年何かの財産を息子の妻に贈与するというのはやりにくいでしょう。➋のように、自分が死んだらこの財産を息子の妻に贈与するという遺言をしておくのは良い方法かと思われます。

 

ただ、遺言というのは、遺言書を書いた人が書き換える可能性があり、書き換えた場合は、後に書いた遺言が優先します。

 

たとえば、親が息子以外の兄弟から圧力を受けて遺言を書き直した、あるいは息子の妻とのちょっとした衝突がもとで遺言を書き直したという場合、息子の妻は何も取得できなくなってしまいます。➌の死因贈与契約も良い方法ですが、あまり知られている方法ではありませんし、死因贈与契約も撤回される可能性があります。

 

親が息子の妻と養子縁組をすると、息子の妻は親を扶養する義務を負うとともに、親を相続する権利を持つことになりますから、養子縁組をするのもひとつの方法です。養子縁組をすることによって、息子の妻もこれまで以上に親に尽くしてくれるかもしれません。また、不幸にも息子が亡くなってしまい、その後も息子の妻が親に尽くしてくれるような場合は、息子の妻と養子縁組をしてもよいでしょう。

いったん養子縁組をすると「離縁」は非常に困難

ただ、養子縁組をすると、合意による離縁は別として、離婚と同じくらいの理由がないと離縁をすることができないので、息子の妻の人柄をよく見極める必要はあります。

 

また、前述しましたが、養子縁組をして相続人の数を増やすと、他の相続人の感情を害し、紛争を誘発する原因となることがあります。息子の妻を養子にする場合、親は、養子縁組をしたことを隠すのではなく、養子縁組をしたこと、また理由について、他の子、その他の親族にもよく説明しておいた方がよいでしょう。

 

さらに、いったん息子の妻と養子縁組をすると、息子が亡くなった、あるいは息子と息子の妻が離婚したという場合でも、養子縁組が自然に解消されることはなく、息子の妻は1人の相続人として親の財産を相続します。親が見込んで養子縁組をしたほどの息子の妻であれば、そこでトラブルになることはないと思われますが、いずれにしても、養子縁組をするのであれば、人柄の見極めが重要ということになります。

 

 

■人柄の見極めが大事

■息子の妻と養子縁組とした場合、親族によく説明する

本連載は、2018年1月1日刊行の書籍『相続に活かす養子縁組』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

相続に活かす養子縁組

相続に活かす養子縁組

森田 茂夫,榎本 誉,田中 智美,村本 拓哉

日本法令

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