不動産は賃貸借契約、医療機器は売買契約として移転
〔1〕売買契約、賃貸借契約
拠出財産として財産目録に載せることなく資産を移転するには、医療法人との間で売買契約を締結するか、賃貸借契約を締結するかという2通りの方法があります。
不動産の場合は、賃貸借契約を結ぶのが一般的です。賃料が適正であることの根拠として「近傍類似値について」の書類を添付する必要があります。
この近傍類似値は、インターネットでの検索結果からピックアップすれば十分です。もし地方などで近隣に参考物件が見つからない場合は、近傍の範囲を広げて探します。
医療機器の場合は、分割払いによる売買契約が便利です。リースにすると、契約の件数や機器の数量等によっては反復継続性があると認められて薬機法違反となる場合があるからです。売買による場合は、代金を複数年の分割払いにすることで、設立後2年間の運転資金の必要額を抑えることができます。
また、売買代金は、一般的には固定資産台帳の簿価を使用します。
消費税を税込経理方式で行っている場合は簿価のまま、税抜経理方式で行っている場合は簿価に消費税を乗じた金額にしてください。
設備等を分割払いすれば、借入金の引継ぎ問題が解決!?
よく個人開業時の借入金の引継ぎが問題になりますが、その場合の一つの方法として設備や医療機器などの備品を売却した代金を分割払いで支払うことで問題を解消することができます。
医療法人は個人に対して未払金があるので、個人が銀行に支払っている年利部分を医療法人で負担することも可能です。
通常、法人から支払われた利息は雑所得として申告する必要がありますが、譲渡代金を一括払いしていれば個人の借入金は全額返済できたのに、法人からの要望で分割払いに応じ、個人の借入金が残ったことになります。
雑所得の金額を計算する上で、必要経費に算入できる金額は、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額ですが、上記のように個人の借入金の利息は分割払いに応じたために生じる利息であり、収入に直接要する費用として認められることになります。
したがって、個人が支払っている借入金の利息より多い利息を法人からもらわない限り、雑所得としての申告は不要です。
なお、その際は利息補てん分として支払う旨を記載した覚書等を作成しておくとより安心です。