▲トップへ戻る
医療法人の設立…個人による運転資金の借入が引き継げない理由

今回は、運転資金を負債として引き継げない理由について見ていきます。※本連載は、税理士・行政書士で、医業経営研鑽会会長の西岡秀樹氏、特定行政書士・医業経営コンサルタントの岸部宏一氏、特定行政書士・認定登録医業経営コンサルタントの藤沼隆志氏、行政書士・入国管理局申請取次行政書士の佐藤千咲氏の共著『医療法人の設立認可申請ハンドブック』(日本法令)から一部を抜粋し、医療法人設立時にポイントとなる「基金・財産・負債」について解説していきます。

運転資金の効果は「個人」に帰していると考えられる

〔3〕運転資金の借入を引き継ぐことができない理由

 

前回、運転資金にあてた借入金は引き継ぐことができないと説明しました。このことについて「なぜですか」とよく質問を受けますが、運転資金は拠出財産の取得に使ったものではなく、その効果がすでに個人に帰していると考えられるからです。

 

たとえクリニックの運営に使ったと主張しても、本当にクリニックの運営に使ったものだという証拠がありませんし、事業所得の利益の一部になっている可能性もあります。さらにクリニックの運営といっても他の借入金の返済に使っていたり、生活費の一部に使っていたり、お子様の学費の一部に使っている可能性もあります。

 

ですから、厚生労働省も財産の取得又は拡充のために生じた負債以外は引き継ぐことが適当ではないとしています。

 

●医療法人制度について

([医政発第0330049号平成19年3月30日/最終改正:医政発0531第1号平成24年5月31日]より抜粋)

(4)医療法人の設立に際して、現物拠出又は寄附すべき財産が医療法人に不可欠のものであるときは、その財産の取得又は拡充のために生じた負債は、当該医療法人の負債として取り扱って差し支えないこと。

 

ただし、負債が財産の従前の所有者が当然負うべきもの又は医療法人の健全な管理運営に支障を来すおそれのあるものである場合には、医療法人の負債として認めることは適当ではないので、設立の認可に当たっては十分留意されたいこと。

当該借入により拠出財産を取得した裏付けを用意

〔4〕引継ぎに必要となる根拠資料

 

①当該借入により拠出財産を取得した裏付け(領収証等)

 

当該借入により拠出財産を取得した裏付けとなる根拠資料としては、契約書や領収書を用意します。その際、領収書は融資実行日以降の日付を要求する自治体もあるので注意してください。また、これらの根拠資料が揃わない場合は、そもそも負債を引き継ぐことができません。

 

要件を満たさず借入引継ぎができない場合は、買取りなどで対応するか(詳細は次回を参照)、役員報酬を原資として個人で返済することになるため、後々のトラブルを回避するためには、その旨を当事者が納得した上で手続きを進めることが重要です。

 

②金銭消費貸借契約書

 

名目が設備費用、医療機器購入費等であり、運転資金ではないことが明示されている必要があります。

 

個人開設時に開業ブローカーが介入している場合、「開業資金として」などと一まとめにして、わざとわかりにくくしている場合があるので、注意が必要です。

 

③返済予定表

 

必ず探して添付する必要があります。万が一見つからない場合は、顧問税理士に確認するか、金融機関に再発行してもらうことになります。

 

④金融機関から引継ぎ承諾書を得る手順

 

金融機関には早めに打診する必要があります。その際、計算式を説明した資料の添付が必要になる場合もあります。

 

金融機関に承諾を得ないまま医療法人設立認可申請の手続きを進め、自治体に書類を提出した後に金融機関に説明に行ったところ、承諾を得られず、法人設立が暗礁に乗り上げたケースもあると聞きます。そうした事態を避けるべく、金融機関には必ず院長から第一報を入れた後、顧問税理士又は担当の行政書士等から直接説明に行くことをお勧めします。

 

なお、承諾書への押印は、金融機関の場合は支店長印で構いません。

西岡秀樹税理士・行政書士事務所所長
医業経営研鑽会会長 税理士 行政書士

昭和45年東京都生まれ。大原簿記学校に在籍中に簿財2科目に合格、同校卒業後一度に税法3科目に合格して税理士となり、医業経営コンサルタント会社勤務を経て平成12年に独立。
平成22年に医業経営研鑽会を設立し、現在まで会長を務めている。

著者紹介

MedS.医業経営サポーターズ代表
横浜医療法務事務所代表
 特定行政書士 医業経営コンサルタント

1965年東京都生まれ(秋田市育ち)、1988年中央大学商学部商業・貿易学科卒。バイエル薬品(株)で10年余MR経験後、民間医療法人事務長を経て、(株)川原経営総合センター(川原税務会計事務所/現:税理士法人川原経営)医療経営指導部で修行、2001年行政書士登録、2004年独立。

著者紹介

VALL行政書士法人 代表社員行政書士 特定行政書士 認定登録医業経営コンサルタント

1976年生。岩手県盛岡市出身。帝京大学文学部教育学科教育学専攻卒業。在学中に独学で宅地建物取引主任者試験に、同じく独学で2002年に行政書士試験に合格。
2010年4月より2012年3月まで東京都の医療法人指導専門員(専務的非常勤職員)として医療法人の各種届出・認可申請の書類審査及び電話・窓口相談業務に携わる。

著者紹介

佐藤行政書士事務所代表 行政書士 入国管理局申請取次行政書士

1968年名古屋生まれ。千葉県育ち。
1991年3月立教大学文学部英米文学科卒業後、1991年4月住友商事株式会社入社。
2002年6月行政書士事務所開業。

著者紹介

連載医療法人の設立認可申請~「基金・財産・負債」編

本連載は、2017年9月15日刊行の書籍『医療法人の設立認可申請ハンドブック』(日本法令)から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

 

 

医療法人の設立認可申請ハンドブック

医療法人の設立認可申請ハンドブック

編者:医業経営研鑽会
著者:西岡秀樹、岸部宏一、藤沼隆志、佐藤千咲

日本法令

医療法人の設立認可申請におけるポイントを詳しく解説。医療法の正しい知識・解釈と、各自治体で異なること(ローカルルール)が多い手続きの実務や注意点がよくわかる。申請に必要な書類の実例(設立趣意書・議事録・事業計画…

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧