株価を左右する「ベンチャーキャピタル」の有無
2016年にIPOした83銘柄のうち19銘柄が、初値が付いたその日にストップ高を付けています(図表1)。こうしたストップ高を付ける銘柄には、何らかの相関性があるのでしょうか?
ほぼストップ高の水準まで上昇した銘柄も含めて、上位の10銘柄を詳しく見ると、上場後、初値が付いたらすぐに売却に動く株主であるベンチャーキャピタルが入っていないケースが多いことに気付きます。また、市場で売買される株数に連動する資金調達額が、10億円台までの銘柄が多いこともわかります。
IPO株の上場当日の株価の動きは、市場で流通する株数と調達金額が少ないがために、主に需給によって左右されるということです。
[図表1]2016年IPO銘柄 上場日ストップ高の銘柄一覧
銘柄の成長性などを考慮せずに儲けられる理由とは?
ストップ高と似ているのですが、初値が付いたあと、上場当日の高値まで20%超上昇した銘柄も見ておきたいと思います。
どうして初値が付いてから20%超も株価が上がるのか? この理由は前述の理屈とまったく同じで、需給がタイトだから、買い方優勢で株価が上昇するという理由です。
では、なぜ需給がタイトになる銘柄があるのか? これが非常に重要なポイントとなります。
[図表2]2016年IPO銘柄 上場日20%超上昇銘柄一覧
初値vs.上場当日高値の騰落率が20%超あった2016年銘柄一覧を見てください(図表2)。表中に「ロックアップ」という項目があります。前章(※書籍参照)でも少し触れましたが、このロックアップとは、上場する前から株式を保有している大口の株主と主幹事証券会社が、ある一定の期間、あるいは、ある一定の株価が付くまでは、上場後に株式を市場で売却しないことを約束するものです。
さらに解説すると、図中の「90日」「180日」とは、上場日からその期日が過ぎるまでは既存の株主は保有株を売却しない、ということであり、「1.5倍」とは、上場後、株価が公開価格の1.5倍以上で値が付くまでは、保有株式の売却をしないということです。
例えば「1.5倍」のロックアップがある銘柄なら、1.4倍程度までで初値が付けば、その後さらに10%以上株価が上がって公開価格の1.5倍になるまでは、理屈上は大口の売り注文が出ないことになります。
さらに、たとえ公開価格の1.5倍以上の株価まで上昇したとしても、大口の株主は主幹事証券会社に保有株を預けているため、ネット証券で個人投資家が売り注文を出すようにはスピーディに売り注文を出せません。ロックアップ契約をしているような既存株主は、証券会社に電話で売り注文を出さないといけないのが実情です。そのようにして注文を出している間に、株価はさらに急上昇して、ストップ高付近まで買い上げられることが多いのです。
デイトレードで儲けるのは難しいことだと思われがちですが、IPO株の上場日の超短期デイトレードに関しては、銘柄の成長性などは考慮する必要がありません。需給が何よりも大事だということを理解して、上がりやすい(ベンチャーキャピタルが少なく、資金調達額も少なく、ロックアップがある)銘柄を飛び乗り・飛び降りで売買するようにすれば、それだけで儲けられる可能性があるのです。