上場以降の値動きを指数化した「一代足」
公開価格で買って、初値で売ることで儲けを得ることについては前回で述べましたが、もし初値で売らないとどうなるのか、についても解説していきます。下の図表2に一代足(いちだいあし)とよばれるローソク足のチャートを掲載しました。グラフは先物のチャートで使われる一代足の考え方に基づいており、個々の銘柄の公開価格を100として、上場以降の値動きを指数化しています。
このように、銘柄の値動きを1本の足に凝縮することで、現時点での位置関係を把握することが容易になります。
また、各銘柄を上場日順に配置することにより、時系列での市場環境を大まかにつかむことも可能です。ローソク足は初値を寄付きとし、現在値を引値としています。ヒゲは、上場来の高値、安値を表しています。
時間が経過すると「陽線」が多くなる理由
一代足にはIPO銘柄の現況を一望できる優れた特徴があります。
しかし、上場日が新しくなる(=グラフ右側に近づく)ほど、価格のサンプル数が少なくなるため、今後の相場変動によっては、位置関係が大きく変わる可能性が高くなります。
[図表1]IPO一代足の紹介
[図表2]IPO銘柄の現代水準(過去11ヵ月)
図表2は、2016年8月31日にIPOしたデファクトスタンダード(3545・マザーズ)から、2017年8月9日にIPOしたトランザス(6696・マザーズ)までの直近12カ月間にIPOした銘柄の一代足です(現在値は2017年8月末時点のもの)。これらを見ると、陽線(初値よりも現値のほうが株価が高い)銘柄が図の左側に集中していることに気付きます。これは、公開価格で買った投資家が、初値でいったん利益確定の売りを出すため、右側のIPO直後の銘柄では、陰線(現値のほうが初値よりも株価が低い)銘柄が多くなるためです。
逆に時間が経過すると陽線が多くなっていくのは、上場時の公募・売出し株を買った投資家の利益確定が一巡した後に、IPOした企業の業績がよくなると、成長性の観点から買い直される銘柄が出てくるからです。
ここから、運よく公開価格でIPO株を手に入れることができた投資家は、いったん初値で売ることでしっかりとキャピタルゲインを得るのを狙う手法が基本戦略となり、さらにIPOした企業の業績を見ながら、再度、買い直すことが妥当な戦略となることが読み取れます。