前回は、風俗業に特化した税理士の事例を取り上げました。今回は、「エンタメ業界」に専門特化した税理士の成功事例を見ていきます。

「税理士業はサービス業」との思いが独立の起点

事例2「エンタメ業」に特化して、業界特有の経理処理に対応

 

42歳で税理士事務所の拡大を目指して独立し14年。現在200社程度の顧問先を抱える二瓶先生のケースです。

 

二瓶先生が会計事務所へ最初に勤めたのは当時24歳の時です。税理士資格の勉強をしながら、スタッフとしての実務経験を学び、32歳で5科目合格し、晴れて税理士登録となりました。その後、独立はちょうど10年後の42歳の時です。独立のきっかけは税理士事務所を拡大したかったからということですが、税理士を志した頃から、いろいろなところで税理士先生方がお客様に偉そうな態度をとったり、接客としての意識が低かったりするそのスタンスには疑問を持っていたそうです。

 

「税理士業は基本的にサービス業なのに・・・」と考えていた二瓶先生は、自分が独立したらそういった先生方の振る舞いに習うのではなく、反面教師にして自分の接客に生かそうと考えていました。

複数の業界に精通すれば「経営のリスクヘッジ」に

二瓶先生は初めからエンタメ業界に特化するつもりはなかったようですが、たまたま知り合った方がエンタメ業界の会社へ就職したことがきっかけとなったそうです。その方の会社の顧問として税務を担当したのですが、コンテンツを非常に大切にする会社だったことから、必要な税務知識を幅広く収集し、勉強することで詳しくなっていったことが始まりです。

 

最初に詳しくなることができたので、その後エンタメ業界のお客様の仕事を受けたときに理解、共感が早く、うまくアドバイスすることができたようです。そこから、エンタメ業界のお客様であれば力になれると思い、エンタメ業界のお客様になら他事務所よりも役に立てるという自信が生まれたということです。

 

二瓶先生の場合、特化というのはあくまで独立後に事務所をうまく軌道に載せるための手段に過ぎませんでした。しかし、ある一つの業界について詳しくなるというのは、その業界の他のお客様にもその情報を還元できます。その強みを生かして同業界で顧問先を増やし、事務所を順調に経営できるようになれば、さらにまったく別の分野の業界まで仕事を派生させていくということが可能になります。

 

つまり二瓶先生の場合は、得意分野で一点突破し続けるわけではなく、その一点を契機として、あらゆる仕事を引き受けるような地力をつけて、事務所の拡大を成功させたことということになります。ある一つに業界に特化して攻め続けるということも可能ですが、すべての顧客がその業界であるとは限りません。事務所規模が拡大し、余力ができてくれば他の業界の勉強をしていくことも良いことだと思います。得意分野を持ちつつ、他の複数の業界に精通するというのは、経営のリスクヘッジにもなるので正しい経営判断の一つだと思います。

本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『「税理士」不要時代』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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