前回に続き、「風俗業界」に専門特化した、税理士の成功事例を見ていきます。今回は、情報集積の重要性を取り上げます。

特化することで蓄積した情報が「強み」に

前回の続きです。

 

特化していると、業界の多くの実績と情報が集まります。実際に松本先生の事務所では業界的に有名なエリア全てにお客様を抱えているということなので、どこの風俗店に税務調査が入ったかということも把握できますし、何が問題となったかという情報もすぐに入手できます。風俗業は銀行からお金を借りられない業種であり、税務調査の結果次第で資金繰りが大きく動揺します。そのため、税務調査時には的確な対応をすることが税理士に求められます。

 

松本先生の事務所では情報が蓄積しているので、税務調査対応は万全です。これこそが最も強みとなるサービスです。各税務署による判断の〝ブレ〞があっても堂々と指摘することができます。つまり、税務署より上手に立てるということです。税務調査で適切な対応をして顧客を守ることができるので、税理士としての役目を全うできているわけですし、顧客満足度が向上するという好循環が生じます。

 

また、松本先生は顧問先同士のビジネスマッチングも行っているようです。風俗業は業界的にビジネスの情報が入りづらいので、事務所主催のゴルフコンペ等で他業種の顧問先と引き合わせ、ビジネスの拡大をバックアップすることなども行っているようです。

多くの顧客を抱えることで、取引先を選べるように

メリットは業績や顧客数に集約されています。特化したことによって、急成長とは言わないまでも、着実に業績は上がりました。着実とは言いましたが、通常の事務所よりもかなりスピード感のある成長を遂げており、社員の給料も高くできています。例で言えば、33歳男性で月収が70万円を超えるレベルです。

 

さらに、今500件くらいの顧客を抱えています。2016年の契約件数で言えば100件以上にも及びます。それだけの顧客を抱えることができると、付き合いたくない人とは付き合わなくて済む環境になります。たとえば、脱税志向の高い企業などはシャットアウトできるのです。自分たちが働きやすい環境を整えていくことができます。

 

また、2〜3か月に1回の面談で月額顧問料が3万〜5万円台、中には月額顧問料20万円台の顧客もいるほどで、風俗営業の税務対応に自信があるので低価格にする必要がないですし、料金体系もコソコソする必要がありません。むしろ、少しでも料金の透明性を高くして風俗営業を営むお客様を応援したいという気持ちを前面に押し出しています。

 

今は他の税理士事務所でも、風俗業の顧問をやっているところがありますが、松本先生のところほど規模が大きく、システム化しているところはないと思います。風俗専門としては日本一の事務所となった今、今後は美容室や飲食業の顧問先を積極的に獲得することを考えているようです。

 

 

業種特化によって比較的短期間の間に事務所を拡大することができたことで、さらなる事業規模拡大やサービス展開を視野に入れることができているようです。

本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『「税理士」不要時代』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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