顧客目線ではない税理士に失望し、自ら税理士の道へ
事例4「賃貸経営」に特化して、5年で専門家としてテレビ出演を果たす
最後に、私自身の例も掲載させていただきたいと思います。これまでに述べてきたこともあるので重複するところもありますが、まとめとしての意味合いを含めて、時系列を整理して書かせていただきます。
本書の「はじめに」でも触れましたが、私は実家のアパート経営が危機的な状況に陥るまで、顧問税理士に放っておかれた経験があります。しかも相談を持ちかけても安易に売却を勧めてくるだけ・・・。自分が大家さんという立場になってみて、税理士の仕事ぶりに失望するという税理士の業界的な課題に真正面からぶつかっていました。そして、こんなことなら自分が大家さんの味方になりたいし、そのほうが絶対よいアドバイスができると思ったことをきっかけに大家さん税理士を志すことになります。
税理士という国家資格を持っている人でも、顧客目線で有益なアドバイスやコンサルティングを行えない人もいるのは仕方のないことかもしれません。今までそれで税理士業は成り立っていたわけですし、一人の税理士がすべての業界事情を細部まで把握することは実際に不可能だからです。だからこそ、税理士はもっと新しい働き方を模索すべきではないかと感じていました。
顧客との繋がりを第一に考えた末、独立開業を選択
私は税理士の勉強中から実家の大家業を引き継ぎ、空室対策や経営改善に取り組んでいました。税理士の資格を取ってからは、大家業に活かせるということもあって不動産・相続税務専門の大手税理士法人に勤務して経験を積むことになりました。
ところが、その勤務先で待っていたのは顧客ファーストな姿勢よりも、同僚同士での地位争いや面倒くさい仕事の押し付け合いなど低レベルな競争でした。まともに同僚との会話もないまま黙々と大量の単純作業の数々をこなす日々で、これが税理士としての本当のあり方なのかと疑問を感じていました。
私はもっと、実家のアパート経営の窮地を打破した経験を活用して、同じように困っている大家さんたちの力になるつもりでした。自分の専門性を高く持ち、親身になって顧客の細かい事情まで入り込んだアドバイスやサポートを行いたいとずっと思っていました。それが税理士としての真のあり方だと感じていたのです。
そして、あるとき、独立を選択しました。
それは単に自分と会社の方向性が違うということだけではなく、独立開業するのにしっかりとした勝算があったためです。なぜなら私はその職場に勤めている頃から、大家さん専門ということをすでに売りとして仕事をしていて、大家さんとの繋がりを多く持っていたからです。自分が大家という肩書を持っていたがゆえに、勤務税理士の頃から大家さんたちとの交流が強まっていき、結果、開業時に賃貸経営に特化することは既定路線になっていたのです。私自身も、この道は間違っていないと少なからず自信を持っていました。
この話は次回に続きます。