前回に引き続き、経経営コンサルを行う税理士に「専門力」が不可欠な理由を見ていきましょう。今回は、他業種・他業界からの視点も併せて紹介します。

データとともに費用対効果を示せば、説得力が高まる

前回の続きです。

 

どちらの事例も外観を多少変えただけで、内装などには手を入れていません。作業費用としては約100万円ほどだったのですが、その費用対効果は絶大でした。

 

こういった事例を通じて、私の中には「賃貸物件は見た目が大事」というデータが蓄積されました。「見た目が大事」などということは、おそらく誰でも頭ではわかっていると思うのですが、それを実際にやってみて、「いくらの費用でどれくらいの効果があがるか」をデータとして持っているのとは、やはり説得力が違います。経営コンサルでお客様の共感や信頼を得る秘訣は、こういう点にあると思います。

他業種・他業界の視点や経験も大いに役に立つ

ちなみに、これからの税理士には専門性が重要だと言いましたが、他の業界の事例やデータが参考になる場面もしばしばあります。他の業界で当たり前にやっていることを取り入れると一気に効率化が図れたり、サービスに繋がったりといったことが、実際にありました。

 

大家業で面白いのは、大家だけを唯一の仕事としてやっている人は少ないという点です。サラリーマンが大家をやっていたり、他に商売をしながらやっている人がいたりなど、本当に多種多様です。そういう方たちとお話をしていると、不意にユニークなアイデアが出てくるときがあります。

 

先日もあるディスカウントストアを経営しながら賃貸経営をしている大家さんと面談をしていたところ、その方が「どうして家賃は8万円とか10万円とかの切りのいい数字なんでしょうね」と言いました。それを聞いて、私は「面白い!」と思いました。

 

考えてみれば、ディスカウントストアは980円や999円など切りの悪い数字ばかりです。それは「ギリギリまで値下げしました」「他店より1円でも安く」というアピールの意味があるのでしょう。「だったら、家賃も切りの悪い数字でもいいのでは?」という、この発想は賃貸経営だけをやっている人にはまず思いつきません。

 

家賃でも10万円と言われるより9万9800円と言われたほうが、ぐっとお得な気がします。しかも、他では見ない数字なのでインパクトもあります。「家賃のディスカウント」というだけで話題にもなりそうです。このように考えると、たった200円の差ですが、それ以上の付加価値を打ち出すことができます。

 

我々が専門特化をしていくうえでは、このように他業種・他業界からの視点や経験も役に立ちます。専門性を深めながら横の広がりも持てると、なお理想的です。

本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『「税理士」不要時代』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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