近年、「顧問料比較サイトの発展」「公認会計士、弁護士による税理士登録の増加」などにより、税理士の生き残り競争が激化しています。本連載では、そんな競争が激化する税理士業界の現状を分析し、今後勝ち残るための方法を解説します。

専門力のない税理士では、顧客を「成功」へ導けない

経営コンサルを突き詰めていくと、必然的にたどり着くのは各業種・業界における「専門力」の必要性です。節税や経費、借入金など一般的なアドバイスはどの業界・業種でも共通する部分ですが、いかに事業拡大や収益アップをしていくかという経営戦略的なアドバイスになると、専門的な知識やノウハウの蓄積が求められます。

 

専門力がないと、業界的に伸びていく可能性があるのかの見極めや、経営にテコ入れが必要かどうか、また、どういった方向に舵を切るべきかなどの判断ができませんし、顧客を成功へ導いていくこともできません。

 

ただし、いくら勉強熱心な税理士でも、一人で10も20もの業種・業界の事情を子細に把握するのは、現実的に考えて難しいことです。やはり一つの業種に絞り込み、さまざまなデータや事例を蓄積していくことで、コンサルティングのクオリティーを高めていくというのがベストな方法でしょう。

 

これからの税理士は、各々が専門分野を持つことで業界ごとの市場拡大に貢献していくことが理想です。

 

データや事例の蓄積は、専門力のアップには不可欠です。そのアーカイブは多ければ多いほど、説得力をもってコンサルティングをしていけますし、専門的ノウハウやテクニックとして顧客に還元していけます。

税理士の著者がセミナーで話す、賃貸経営の経験談

たとえば、私は一般向けのセミナーなどをするとき、よく自分自身の賃貸経営の経験談を「一つの事例」としてお話しします。

 

私が9年前に親から引き継いだ賃貸アパートは全部で5棟86室ありましたが、そのいずれもが赤字続きで経営的に非常に厳しい状態にありました。そのうちの1棟は女性向けのアパートでした。立地的には悪くなかったのですが、周囲に同じようなアパートが何軒かあり、建築年数の経ったうちのアパートにはなかなか入居者が集まらなくなっていました。けれども、予算的に大々的な建て替えや改修はできません。

 

そこで私が取った方法は、アパートの外装を変えることでした。壁面をタイルで飾ったり、階段や外通路を塗り替えたりなど、「女性が好む外観」を意識して変えたのです。すると、その直後から入居者が増え、数か月後には満室になりました。

 

また、別のアパートは「フラワーアパートメント」というテーマにして、エントランスを花で飾りました。実は、それまでエントランスがゴミ置き場になっていて、入居者たちの出したゴミ袋が道路から丸見えだったのです。そこでゴミストッカーを設置して中にゴミを入れるようにしました。

 

そして、バラのアーチや花壇を作って見栄えを美しくしました。すると、これも若い女性たちに大変好評で、地域では人気の物件の一つになりました。

 

この話は次回に続きます。

本連載は、2016年12月9日刊行の書籍『「税理士」不要時代』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

「税理士」不要時代

「税理士」不要時代

渡邊 浩滋

幻冬舎メディアコンサルティング

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