前回は、会社を測るシンプルな指標として「ROE」を取り上げました。今回は、当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジについて少し詳しく見ていきます。

株主の投資効率を上げるにはレバレッジも必要

前回触れた当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジについて、ひとつひとつ細かく見ていってみよう。

 

当期純利益率とは、売上高等の収益から原価や経費を差し引いて最終的に残る純利益が、売上高の何%に当たるのかをみるものだ。この数字が高ければ高いほど、利幅の高いビジネスをしていることになる。


総資産回転率とは、総資産をどのくらい活用して売上を上げているのかをみるものだ。

 

そして財務レバレッジとは、総資産が自己資本の何倍あるかを示したものだ。財務レバレッジが高いということは、それだけ借金をしているということでもあるが、借金は、少ない自己資本を補って大きなビジネスをするためには欠かせないものだ。株主から集めた元手だけで買った資産では1の売上しかあげられなくても、借金をして資産を増やせば2の売上があげられる、そうすれば利益も倍になる、という考え方だ。

財務レバレッジは何より「バランス」が重要に

借金をするというテコ(レバレッジ)を使って総資産を大きくし、その総資産を活用することで、より高い売上高を実現すれば、株主にとっては同じ元手でも、財務レバレッジが利いていると、利益が増えるということになる。

 

長らく無借金経営が是とされてきた日本においては、なかなか定着しづらい考え方ではあり、リーマンショック以降ハイレバレッジについての批判も大きくなっているが、株主の投資効率という視点からすれば、ほどよい借金は、無借金よりもむしろ歓迎されているという事実もある。

 

これまで無借金がよしとされてきたのは、銀行に借り換えを拒否された場合の倒産リスクを回避できるという理由からだ。だが、借金をするだけの体力があるにもかかわらずしないと、銀行や投資家から、本来であればあげられる売上をあげていないという見方もされる。

 

一方、もはや売上の伸びない会社が無借金であることも多いので、借入しても売上は伸びないケースもある。その場合には、自己資本の使い方の問題なので、資本・負債の入れ替えをする、もしくは配当などで、自己資本を減らすという選択肢もある。非上場企業の社長が、個人の信念で無借金経営を選択する分にはまったく問題がない。だが、上場企業には、より高い収益を稼ぎ出すことが期待されていることをわかってほしい。

 

ただし、この財務レバレッジは、レバレッジを有効に利かせている優良企業ではほどほどの倍率になり、逆に自己資本が少なく借金過多の会社では極めて高い数値になる。ゆえに財務レバレッジの数字は、高からず低からず、つまり、バランスがとれていなければならない。

本連載は、2010年3月1日刊行の書籍『CFO経営 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

CFO経営

CFO経営

佐藤 英志,須原 伸太郎

幻冬舎メディアコンサルティング

上場企業を取り巻く環境は、この30~40年の間に激変しました。カリスマ社長の「勘」だけでモノが売れたのは、昔の話。経営が複雑化した時代に企業に求められるのは、財務の専門家の視点を持った経営です。本書では、なぜCFOが…

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