その節税対策で本当に手元に資金が残ったのか?
節税の本来の目的は何かといえば、税金を払いすぎないようにすること、つまりは税金を合法的に節約することによって、できるだけ多くの資金を手元に残すことのはずです。しかし、いわゆる節税対策といわれているものの中には、それを行うことによって逆に資金が出ていく結果となっているものもあります。生命保険を使った節税策はまさにその典型例といえるでしょう。
保険に入ったからといって、必ずしも税金がゼロになるわけではありません。支払った保険料を考えたら、むしろ保険に入らずに税金を払っていた方がより多くのお金が手元に残っていた――というケースは実際少なくありません。
もちろん、万が一のことを考えて保険に加入することは、「転ばぬ先の杖」として大切です。しかし、単に税金を安くすることだけを目的として保険に入っているというのであれば、いま一度、本当にそれが多くの資金を手元に残すという節税の本来の目的にかなっているのかどうか考えてみる必要があるのではないでしょうか。
そもそも、節税の方法には、保険の活用のように新たにお金を使う必要があるものと、その必要がないものという2つのタイプがあります。前者のタイプとしては、たとえば社用車として高級車を購入する方法などもあります。これも現実には自動車を購入した代金と節約できる税金を考えてみれば、どれほどの節税効果があるかは疑わしいところです。
やはり、節税本来の目的からすれば、後者のタイプ――新たなお金を使う必要がない方法を理想とすべきでしょう。その具体的な手段としては、以下のような例があげられます。
①不良資産の処理を行う
たとえば、取引相手の財務状況が悪化しているため、支払いが期待できないような売掛金については、内容証明を送り債権放棄の手続きをとることによって、貸倒債権として処理することが考えられます。
②税金に関する各種優遇措置を活用する
たとえば、所定の要件を満たす形で従業員を雇えば減免税する、税率を下げるなどの優遇措置が制度的に行われています。特に、中小企業の保護育成を目的とした優遇税制は国だけでなく各自治体によって用意されている例も多いので、地域の役所などに問い合わせて確認してみるといいでしょう。
中小企業が活用しやすい「所得拡大促進税制」とは?
参考までに、現在、行われている優遇税制の中から、中小企業にとって特に活用しやすい「所得拡大促進税制」の概要について紹介しておきましょう。所得拡大促進税制は平成25年度の税制改正で導入されたもので、従業員の所得拡大による消費振興を目的としています。
この制度を活用すれば、平成30年3月31日までの期間内に開始する各事業年度において従業員に対する給与を増やした場合に、給与の増加額の一定割合分を法人税から控除することが可能となります。
本制度を利用するために、税務申告の前に特別な手続きを行う必要はありません。ただし、法人税の申告の際に、確定申告書等に、税額控除の対象となる雇用者給与等支給増加額、控除を受ける金額及びその金額の計算に関する明細書を添付する必要があります。
また、青色申告をしていること、雇用促進税制などの「雇用者数を増やした場合の法人税減税措置」を利用していないことも求められます。なお、控除できる税額は、その適用事業年度における法人税の額の10%(中小企業の場合は20%)が限度となります。
所得拡大促進税制に関してはここで触れた以外にも細かな要件が定められていますので、顧問税理士など専門家のアドバイスを受けながら、利用を検討してみるといいでしょう。