税務調査は「長引くほど有利」と考えれば・・・
前回に引き続き、税務調査に関する「誤解」について見ていきます。
【誤解3 事前資料はすべて完璧に準備しておくべき】
税務調査が入るときに、事前の準備として資料をきちんと整備しておくことは、調べる側、調べられる側双方にとって、やり取りをスムーズに進められるというメリットがあります。しかし、前回述べたように、税務調査は長引かせれば長引かせるほど有利になります。そのためには、むしろ資料を巡るやり取りがスムーズにいかない方が望ましいとさえいえるのではないでしょうか。
たとえば、調査官から、「○○の書類はありますか?」と尋ねられたときに、「あります。どうぞ」とポンと手渡すよりも、「あっ、待ってください。それは違う部署の管轄なので、ここにはありません。担当者に聞いてきます」といって、結果的に調査官を待たせるような状況の方が、好ましいといえるかもしれません(もちろん調査官に意地悪をしているわけではなく、一所懸命探しているにもかかわらず、お目当ての資料がなかなか見つからない状況を想定しています)。
申告書には余計な情報は一切書かないほうが無難
【誤解4 申告書には取引先の情報をすべて漏らさずきちんと書くべき】
申告書の中には売掛金や未払金、借入金の額について記載する箇所があります。しかし、どの取引先に対する売掛金、未払金なのか、あるいはどの金融機関から借り入れたものなのかという具体的な情報を細かく書くことまでは求められていません。
にもかかわらず、税理士の中には、手抜きと思われたくないのか、取引先の情報を全て漏らさずしっかりと書く人がいます。あくまでも筆者個人の見解になりますが、このような完全主義的な態度は税務対策という観点からは決して望ましいものではありません。
法定外資料に関して先に触れたように、税務署側に情報を提供しないことも1つのテクニックです。取引先の情報を伝えたら、調査官は「ではそちらも見てみよう」と取引先の申告書をわざわざ手配して細かくチェックするかもしれません。その結果、万が一、自社と取引先の申告書の記載に矛盾する点などがあれば、最悪の場合、自社の申告漏れを疑われてしまうことになるかもしれません。
また、どの取引先に売掛金があるかを税務署に把握されていると、会社の経営が厳しくなり税金が払えなくなったような場合に、売掛金をすぐさま差し押さえられるおそれもあるでしょう。このような自社にとって不利益な状況がもたらされるおそれがあることを考えれば、申告書には義務づけられていることだけを記載し、余計な情報は一切書かないことが無難といえるでしょう。