前回は、ロボットトレーダーの可能性と限界について取り上げました。今回は、1000分の1秒以下の速度で株の売買を行う、HFT(高頻度取引)の実際を見ていきます。

人間には不可能なスピードで利益を出す「高頻度取引」

HFT(High Frequency Trading、高頻度取引)とは、1000分の1秒以下といった極めて短い時間で自動的に株の売買をすることです。人間のトレーダーには不可能なことで、ロボットトレーダーの独壇場になります。

 

HFTでは、小さな株価の動きに反応して小さな利益を出し、それを何度も繰り返すことで利益を積み上げていきます。一つひとつの取引は少額でリスクは小さく、また利益が出る確率が極めて高い取引しか実行しないので、高い確率で利益が出ます。

 

2012年の段階でアメリカでは全株取引の6割以上、日本では東京証券取引所での取引の3、4割はHFTだと推測されています。

AI同士の性能競争となり「利益の確実性」は低く・・・

HFTに対する専門家の意見はまちまちです。例えば、株価の変動性を高めているとする人もいれば、逆に価格変動を抑えているという人もいます。規制すべきかどうかについても意見が分かれています。

 

HFTについてはほぼ確実に利益が出るということが不公平だと批判されていたのですが、今ではロボットトレーダー同士の性能競争になっていて、確実に利益が出るとは言い難くなっています。

 

また2010年5月にアメリカ株式市場で起きた「フラッシュクラッシュ」(ニューヨークダウ平均がわずか数分間で1000ドル下落した事件)の原因がHFTだといわれて批判を浴びました。これについても現在では値幅制限があるのでここまで下落しないことと、下落しても30分ぐらいしか続かずまたもとに戻ることなどから、あまり問題視されなくなっていると感じています。

 

人間側にも対応力がつき、流れを読んで便乗するトレーダーも出てきました。

本連載は、2017年12月18日刊行の書籍『AI化する銀行』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

AI化する銀行

AI化する銀行

長谷川 貴博

幻冬舎メディアコンサルティング

AIの導入によって日本の銀行が、そして銀行員の働き方が劇的に変化します。単純作業は真っ先にAIに切り替わり、早いスピードと高い精度で大量の業務がさばかれていきます。さらに、属人的な業務でさえも、AIが膨大なデータから…

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