今回は、家族信託で「受託者用信託口座」を開設する理由を見ていきます。※本連載では、司法書士みそら総合事務所代表・酒井俊行氏の著書、『わかりやすい家族への信託』(すばる舎)から一部を抜粋し、認知症の財務管理対策と相続対策の両方に効果を発揮する「家族信託」の基礎知識をレクチャーします。

信託された財産は便宜上「受託者の名義」に変更される

家族信託を団体戦にするためには、家族信託の対象とした財産を個人の財布から取り出して、別の財布に入れておく必要があります。(図表参照)

 

[図表]新しく家族の財布を作る

 

もし別の財布に入れておかなければ、各種手続を受け入れる側(銀行や法務局)から見た時、家族信託の対象となった財産の名義が本人(委託者)のままになっていると、誰が財産の管理処分を任された人(受託者)かがわかりません。

 

本人以外の人物から何らかの手続の申請があっても、その人物が正式な受託者かどうかわからないので、手続に応じてよいかの判断ができません。

 

そのため信託された財産は、便宜上、受託者の名義に変更されるのです。

全く別の家族の財布を新しく作るようなイメージ

例えば銀行預金も本人=名義人Aの口座から、受託者Bの口座へお金を移しておく必要があります。

 

受託者Bは自分の財産と分けて、預金を管理する必要がありますので、もともと自分が持っていた口座ではなく、信託の受託者用信託口座を新しく作成して、その口座でAから信託されたお金を管理する必要があります。

 

家族信託によって、もともとの財産の所有者である本人=名義人A(委託者)の財布でもなければ、受託者個人の財布でもない、いわば全く別の家族の財布を新しく作るようなイメージになります。

 

また、不動産を信託財産とした場合、従来、「所有者A」となっている名義を「受託者B」と変更するための登記手続をする必要があります。これはあくまで便宜上の手続なので「所有者B」ではなく、「受託者B」と登記されます。

わかりやすい家族への信託

わかりやすい家族への信託

酒井 俊行

すばる舎

◎相続の前に、老後の生活をいかにサポートできるかが最も重要 ◎相談に行く前の基本知識 「家族信託ってどんなもの?」という疑問に、スッキリわかりやすく答える本 ◎家族のストーリーをもとに、「家族信託」の検討から設計…

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