今回は、家族信託の目的策定から終了に至るまでの流れを見ていきます。※本連載では、司法書士みそら総合事務所代表・酒井俊行氏の著書、『わかりやすい家族への信託』(すばる舎)から一部を抜粋し、認知症の財務管理対策と相続対策の両方に効果を発揮する「家族信託」の基礎知識をレクチャーします。

どの財産が「信託の対象」なのか明確にしておく

●信託の目的

 

信託をすることで、家族のどんな願いを叶えたいかを明確にして、目的を定める必要があります。

 

受託者の行う財産管理は、信託の目的と合致しているかが基準となります。受託者は、信託の目的に反するような方法で財産を管理処分してはいけません。

 

例えば、実際に契約書を作る時には「受益者の生活を支援する」「受益者の住居を確保する」「円滑な資産の承継」などを目的として定めます。

 

信託の目的によって、どのような未来を実現したいかが変わってきますので、信託の目的をどう定めるかはとても重要です。

 

●信託する財産

 

信託する財産を定め、契約書に記載します。

 

どの財産を信託の対象とするかは自由に決めることができます。全財産を信託の対象とする必要はありません。

 

ただし、どの財産が信託の対象となっているのかについては明確にしておく必要がありますので、信託契約書には財産の種類などを具体的に記載して、信託財産を特定させます。

 

例えば、現金であれば「金○円」というように具体的な金額を記載し、不動産であれば、所在、地番、家屋番号などを記載する必要があります。

どのような場合に信託が終了するのか、具体的に定める

●信託の終了と終了時の信託財産の行方

 

どのような場合に、信託が終了するのかを具体的に定めておきます。

 

信託を始めるのは「目的」があるからで、信託の目的を達成した時や、目的を達成することができなくなった時に信託は終了します。

 

信託の目的が「受益者の生活を支援すること」であれば、受益者が死亡した場合、支援の必要がなくなりますので、信託は終了となります。

 

受益者は当初から複数人定めておくこともできますし、当初の受益者が死亡した場合に備えて、次の受益者も定めておくことができますが、予定していた受益者全員が死亡した時には信託が終了することになります。

 

また、信託財産を全て使い切ってしまったような場合、支援できなくなりますので信託は終了します。

 

信託終了後は「信託の清算」を行います。

 

清算した後でも財産が残っているような場合、残った財産を特定の人物に承継させることができます。そのため、最終的に誰に財産を承継させたいかについても、契約書で定めておく必要があります。

わかりやすい家族への信託

わかりやすい家族への信託

酒井 俊行

すばる舎

◎相続の前に、老後の生活をいかにサポートできるかが最も重要 ◎相談に行く前の基本知識 「家族信託ってどんなもの?」という疑問に、スッキリわかりやすく答える本 ◎家族のストーリーをもとに、「家族信託」の検討から設計…

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