今回は、信託財産から生じた利益を受け取る「受益者」について見ていきます。※本連載では、司法書士みそら総合事務所代表・酒井俊行氏の著書、『わかりやすい家族への信託』(すばる舎)から一部を抜粋し、認知症の財務管理対策と相続対策の両方に効果を発揮する「家族信託」の基礎知識をレクチャーします。

受託者とは異なり、誰でもなることができる「受益者」

受益者

 

受益者は信託財産から生じた利益を受け取る人です。

 

例えば、投資用のアパートを信託財産にした場合、アパートの家賃収入を利益として受け取ることができます。

 

家賃収入が発生しない不動産でも居住すること自体が利益と言えますので、自宅を信託財産として、受益者が自宅に住むために信託を設定することもできます。

 

また、当初の受益者が亡くなった場合に備えて、第2受益者、第3受益者といった次の受益者を定めておくことが可能ですので、希望に応じて受益者を交代させながら信託を継続させていくことが可能です。

 

ただし受益者の交代は、信託開始から30年を経過した後、一度しか認められておりませんので、受益者を交代させながら永久に信託を継続させることはできません。

 

受益者は信託財産から生じる利益を受け取りますが、信託財産の管理運用処分は行いませんので、受託者と違い、誰でも受益者になることができますし、受益者となる際の意思表示も不要です。

 

したがって未成年者や、重度の知的障害のある子供、認知症の配偶者などを受益者とすることも可能です。

受益者代理人などの受益者を「保護する制度」とは?

受益者代理人、信託管理人、信託監督人

 

委託者、受託者、受益者は、家族信託を始めるには必要不可欠な登場人物ですが、受益者代理人、信託管理人、信託監督人は必要不可欠ではありません。言わばオプションのようなものなので、必要性があれば、あらかじめ定めておくという使い方をされます。

 

細かい違いはありますが、受益者代理人、信託管理人、信託監督人のいずれも、受益者を保護するための制度になりますので、通常の家族信託よりも受益者保護の機能を高めておく必要がある場合に利用されます。

 

例えば、受益者が未成年者や認知症の高齢者だったりすると、受益者自身が受託者を監督したり、受託者に自分の意思を伝えるのが難しくなります。

 

このような場合に備えて、受益者代理人を選任しておくことで、受益者の代わりに受託者を監督したり、受益者の権利を行使することが期待できます。

わかりやすい家族への信託

わかりやすい家族への信託

酒井 俊行

すばる舎

◎相続の前に、老後の生活をいかにサポートできるかが最も重要 ◎相談に行く前の基本知識 「家族信託ってどんなもの?」という疑問に、スッキリわかりやすく答える本 ◎家族のストーリーをもとに、「家族信託」の検討から設計…

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