今回は、家族信託を始めるための「信託契約・遺言契約・自己信託」の具体的な三つの方法について説明します。※本連載では、司法書士みそら総合事務所代表・酒井俊行氏の著書、『わかりやすい家族への信託』(すばる舎)から一部を抜粋し、認知症の財務管理対策と相続対策の両方に効果を発揮する「家族信託」の基礎知識をレクチャーします。

外部に明確化(宣言)して始める「信託宣言」

家族信託を始めるには、①信託契約②遺言信託③自己信託の三つの方法があります。

 

信託契約とは、財産を託す人(委託者)と託される人(受託者)が契約をする方法です。契約をすれば、すぐに信託を始めることができます。

 

遺言信託とは、遺言書の中に信託をする旨を書いておく方法です。遺言は、遺言者が死亡しないと効力が発生しませんので、遺言者が死亡した時から信託が始まることになります。

 

自己信託とは、委託者自身が受託者となって、誰か別の人のために財産を管理する方法です。委託者と受託者が同一人物であるという点が、誰かに財産の管理を託す、①信託契約、②遺言信託と大きく異なります。

 

自己信託は、中小企業のオーナー社長などが、早めに後継者に株を譲渡しておきたいが、株の管理(議決権の行使)は、変わらず自分で行いたいというような場合に使われる方法です。

 

信託を始める前と始めた後で管理をする人が変わらないので、信託を始める際、公正証書を作成するなど、外部から見てどのタイミングで、どの財産について信託が始まったかを明確にしておく必要があります。

 

このように、特定の財産について信託が始まったことを外部に明確化(宣言)して始める信託のことを「信託宣言」と呼んでいます。

信託契約の際に「明確にしておくべき内容」とは?

自分が認知症になった時の備えとして家族信託を利用したいという場合は、誰か別の人に財産を管理してもらう必要がありますし、死亡後に信託が始まっても意味がありませんので、①の信託契約により、家族信託を始める必要があります。

 

信託契約も売買契約と同じように当事者間で結ばれる契約ですので、家族信託の場合も、当事者(委託者と受託者)の間で内容を定めて契約を結びます。

 

信託契約をする際には、次のような内容を定めておく必要があります。

 

信託の登場人物

●誰が(委託者)

●誰に(受託者)

●誰のために(受益者)

 

信託の目的

●どんな目的で(信託目的)

●どの財産を(信託財産)

●どのような管理方法で託し(財産の管理方法)

●どんな時に終わり(信託の終了事由)

●終了時の財産を誰に承継させるか(残余財産の帰属先)

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