前回は、廃業を回避した「スモールM&A」の事例を紹介しました。今回は、スモールM&A市場が拡大している「5つの背景」について見ていきます。

年間2,000~3,000件以上もの「M&A」が成立

M&A業界では、実際どれ程の件数が成約しているのでしょうか。正確な数字を把握するのは恐らく不可能かと思われます。データ会社等が独自集計している数字は年間2,000~3,000件などとされていますが、これは主に買手である大手企業がIR等で自ら公表した数字であり、ごく一部であると思われます。

 

スモールM&Aは、買手・売手ともに中小零細企業・個人投資家が多く、そもそも公表することはまれです。筆者が扱う案件でも公表されるのは10件に1件もなく、特に売手側が嫌がる傾向があります。どちらかが開示義務がある上場企業の場合であっても、証券取引所の例外規定である「軽微基準」に該当すれば公表する必要はないのです。

 

それでも明らかに、この一年程度で外部承継型のスモールM&Aが増加しているのを肌で感じます。以下に、拡大している背景・理由を5つほど挙げてみます。

 

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その1 メディア、ネットでの露出が急増

 

中小企業の「後継者問題」は以前から議論されてきましたが、どちらかと言えば、日の当たらない地味なテーマでした。昨年、日経新聞が朝刊一面トップでこのテーマを大きく取り上げた記事を見たときは正直驚きました。その記事内容はSNS等で拡散し、様々な議論がされていたのは記憶に新しいところです。

 

2017年度版の「中小企業白書」では、成熟期(老舗)企業の経営資源を成長期(新規事業)、幼年期(起業)の企業へバトンタッチを促すような記載もありました。また、帝国データバンクや東京商工リサーチが毎年公表している後継者不在比率の調査報告も多くのメディア・ネットで見受けられました。筆者がこの業界に身をおいているから、目につく理由もあるでしょうが熱を帯びてきたのを感じます。

 

その2 売手側が気づいてしまった

 

上記のようなメディア露出急増もあり、中小企業経営者が「自社の事業が売れる」ことに気づきはじめました。経営者の近くにいる金融機関、士業等がM&A知識を身につけ、アンテナ感度が高まってきたこともあるかもしれません。経営者が集う会合でも「後継者問題」はよく出る話題とのことです。取引先や経営者仲間が事業を売却した事例もきっと身近で聞いているはずです。


債務超過や赤字であっても「事業譲渡」や「会社分割」で売却されている事例が増えて、それを扱えるアドバイザーが増えてきたことも見逃せません。また、「黒字廃業はもったいない」と早めに手を打つ重要性も多くの経営者が知ることになりました。中小企業でも、親族でも従業員でもなく「第三者」に売却するという選択肢が身近になってきたのです。

買手は「上場企業・優良中堅企業」に限られていたが・・・

その3 新たなタイプの買手の登場

 

M&Aの買手はこれまで、上場企業や資金力のある優良中堅企業と相場が決まっていました。スモールM&Aであれば、一気に買手の数は拡大します。筆者は先日、譲渡代金が200万円という規模の老舗協会のM&A仲介を行いました。70代の社長から30代の若手経営者へのバトンタッチです。当然ながらビジネスとしてはさほど儲かりませんが、やる気を伸ばすことができる方につなげたことに、この仕事の重要性を改めて感じたところです。この金額であれば、さほど資金がなくても、やる気があれば買えてしまいます。買手の新たな層としては、不動産投資家、ベンチャー企業、企業の新規事業担当部門、シニアの退職者、起業予備軍等です。今後は学生や主婦、日本が好きな外国人などもこの中に入ってくると予想します。

 

その4 M&A経験者の増加

 

売手と買手をつなぐアドバイザーも増えてきました。国内でM&Aが本格化したのは、連結会計制度が改正された2000年前後と記憶しています。この間に大企業を中心として、多くのM&A経験者が社内外に着実に増えてきました。大きな案件では、経営企画部、財務経理、人事総務、弁護士、会計士、社労士、アドバイザー会社がそれぞれの立場で関与します。


その多くは買手の立場でしょうが、過去において決して成功する確率は高くなく、譲渡後のマネジメントで苦労した方が多いはずです。それぞれ様々な想いを持ち、一部の方は転職や独立等で外に出て、中小零細企業のM&A実務に関与しはじめました。筆者もそのひとりです。

 

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その5 金融機関スタンスの変化

 

直近で、弊社が買手側アドバイザーとして関与した案件の事例をご紹介します。創業間もない会社ですが、Webメディア事業のM&Aにおいて、買い取り資金を億単位で金融機関から調達してしまいました。中小企業では珍しい対象会社のキャッシュフローを評価して融資するLBO(レバレッジド・バイアウト)に近い取り組みです。もちろん買手経営者の経験・資質は評価すべきものはありましたが、独立間もない若手経営者で担保など何もない融資です。


日本政策金融公庫でも、事業承継に関する融資に関しては積極的に取り組みはじめたのを感じます。スモールM&Aであれば1,000万円程度で買える案件も多く、創業融資や運転資金で賄えてしまう背景もあります。このような資金調達環境が整ってきたことも買手にとっては追い風です。

 

今回あえて5つのみを取り上げましたが、正直なところ20以上の背景・理由がすぐに頭に浮かびました。民間マッチング業者の新規参入、事業引継ぎ支援センター・よろず支援拠点などの公的支援の充実、事業承継税制、事業承継補助金等の公的資金サポート整備等です。

 

スモールM&A市場の拡大は国内経済にとってプラス作用があるのは間違いなく、このような普及活動に携われることは筆者としても大きな喜びでもあります。常々「M&A」という言葉が持つマイナスイメージを気にしていましたが、そのようなことは杞憂になる時代になるのかもしれません。

 

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