中央銀行は、昔からお金を刷っていたわけではない
前回のつづきです。
では、そのお金はどこで作られているのでしょうか?
現代で言えばお札を刷っているのは国家が管理する中央銀行です。日本だと日本銀行になります。
これは、昔からそうだったのでしょうか? 実はそんなことは全くありません。国家が管理する中央銀行がお金を刷って、国の経済をコントロールするようになったのはつい最近のことです。
最初の本格的な中央銀行は、大英帝国(現イギリス)のイングランド銀行と言われています。イングランド銀行は、1694年にフランスと戦争中だったイギリスが戦争の費用を調達するために作った銀行です。
しかし、当時は一部の政府関係者や貴族の発案で作られた民間の大手銀行の1つに過ぎませんでした。現代の日本でたとえるならば、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行のようなものです。
当時はまだ各銀行が、それぞれ預り証書である銀行券を発行して、それをバラバラに流通させていました。まるで今の仮想通貨におけるアルトコインのような状況です。
イングランド銀行が発行する銀行券も、国が定めた法定通貨ではなく、メガバンクが発行する証書の1つのような存在でした。
100年後に新しい通貨の仕組みが標準になることも
その後、1833年になって初めてイングランド銀行が発行する銀行券を法定通貨と定めて、1844年にピール銀行条例で国営化されます。ここから国家が中央銀行を所有して国の経済をコントロールする枠組みが出来上がります。
それを見た当時のアメリカと日本が、イギリスを真似して自分たちの国にも中央銀行の仕組みを取り入れます。ここから様々な国家に中央銀行制度が取り入れられていき、今の体制が出来上がりました。
ちなみに、1900年代の段階で中央銀行を設置していた国は18ヶ国程度、1960年には50ヶ国。現在では大半の国に設置されています。
こうして遡ってみると、中央銀行が本格的に普及したのはこの100年ほどです。なんだか数千年も続いているような錯覚に陥りがちですが、人類史から見るとつい最近普及した新しい仕組みと言えます。私たちの4世代ぐらい前の時代では当たり前に存在するものではなかったことがわかるはずです。中央銀行が通貨を発行し、国が経済をコントロールするのが標準になってまだ100年程度と考えると、最近出てきた仮想通貨やブロックチェーンなどの新しい仕組みが100年後に標準になっていたとしても、それほどおかしな話ではないかもしれません。