路面は「実店舗のショールーム化」が進む
eコマースの拡大によって、実店舗の役割が変化しつつある。これまでも、ラグジュアリーブランドやファッションブランドが、ブランドイメージの形成や認知度の向上を目的としてハイストリートの路面店舗に出店する事例がみられていた。現在は、他の業種でもこのような目的で出店するケースが増えている。
また、商品の販売よりもショールームとしての機能を重視した店舗の出店も散見されるようになった。eコマースが普及したことで、実店舗は単に商品を販売するだけの場所ではなくなってきているということだ。
それら業種の主な例として、スポーツ、家電、加熱式タバコなどが挙げられる。近年、主要リテールエリアに出店したこれら業種の路面店舗は、実際に商品を試すスペースに店舗面積を割いているケースが多い。いずれも、購入そのものはオンラインに譲り、実際に商品を試してもらう場として実店舗を位置づけている。このようなテナントには、賃料負担能力が比較的高いブランドが多い。実店舗を広告・宣伝の場と位置づけることで、広告宣伝費を出店費用に充当できるためだ。
これらブランドの出店立地は、ハイストリートを中心とした好立地に限定されている。今後、通行量が多い通りや視認性が高い物件で募集が出れば、例に挙げた業種などが競合し、相場を越える賃料でテナントが内定するケースがみられそうだ。
食物販の出店ニーズはセカンダリーエリアに集中
コト消費の広がりの一環で、食物販の需要が増加している。東京に初出店した海外ブランドのうち食物販の割合を時系列でみると、CBREが調査をはじめた2012年には全体の約20%程度だったが、2015年以降は毎年5割を越えている。SNSを通じて自らの体験を人々と共有するという交流方法がミレニアル世代を中心に広まっていることも、背景の1つだ。
最近では特に「インスタグラム」という写真投稿アプリの支持が高く、食物販店のパフォーマンスに大きな影響を及ぼしている。見映えがする、おしゃれに見える、という意味のいわゆる“インスタ映え”した食べ物の写真を撮影するために、店を訪れる人々が増えているのである。検索エンジンのグーグルで“インスタ映え”というキーワードの検索数をみると、2017年に入ってから急増している。
ただし食物販の場合、商品単価は比較的安価であるため、リテーラーの賃料負担能力が高いとは言いがたい。また、日本初進出など話題性の高いテナントはもとより集客力があるため、必ずしもハイストリートに出店する必要もない。結果として、食物販の出店ニーズは賃料に割安感があるセカンダリーエリアに集まっている。
[図表1]東京に初出店した海外ブランドのうち食物販の割合
[図表2]グーグルトレンドでみる“インスタ映え”検索数(指数)