人材確保の条件が整った物件に需要が集まる「首都圏」
<首都圏>
首都圏の新規供給は、2018年に47万坪、2019年に55万坪と、2年連続して最高記録を更新する見込み。2017年Q4時点の空室率は5%程度の低水準に収まる見込みだが、大量供給の影響で今後は上昇基調となろう。2019年には、2010年Q4以来の10%を超えると予想される(図表1参照)。
とはいえ、物流需要が減退しているわけではない。移転事例の多くは、拡張・新設などの前向きな移転が占めている。ただし、立地の良し悪しで物件の評価が大きく分かれる傾向は強まっている。そして、物流立地を考えるにあたってますます重要になってきているのは、人材確保の容易さである。
住宅地に近く、通勤の利便性が高い物件では高めの賃料設定も可能である一方、人材確保が困難とみられる物件はリーシングにも苦戦しよう。物流施設では自動化が進んでいるとは言え、物流現場の人手不足を補う段階には未だ至っていない。人材確保のための条件が整った物件に需要が集まる状況はまだしばらく続きそうだ。
[図表1]首都圏空室率
高水準の賃料が期待される「東京ベイエリア」
東京ベイエリアでは、2017年Q3に一等地と呼べる立地に竣工した物件が、年内中に満室稼動に近づくとみられている。都心での強靭なテナント需要が顕在化したことにより、2017年は実質賃料が大きく上昇した。今後2年間で2棟が竣工予定であるが、2018年竣工物件はすでに満床と伝わっており、2019年竣工の1棟にも引き合いがある。そのため、2019年Q4時点の空室率は1%程度と需給が逼迫する見通しで、賃料は今後も高水準を維持するだろう。
外環道エリアでは、2018年に竣工が予定されている複数の物件で、順調にプレリーシングが進んでいる。希少な立地では、竣工1年前にテナントが決定した物件もみられる。このエリアは、周辺に住宅地が広がっているため雇用面の安心感があり、都心に近いためeコマースが抱えるラストワンマイルの配送ニーズとも合致する。これらが底堅い需要を生み、今後も空室率は1%から5%の間で推移すると考えられる。それに伴って、実質賃料の上昇ペースもやや加速しよう。しかし、このエリアといえども雇用難が想定される物件は、賃料が弱含むだろう。
「圏央道エリア」は自動化設備により評価の向上も期待
国道16号エリアの新規供給は、2006年から2016年の年平均11万坪に対して、2017年はわずか5万坪にとどまる見通しである。しかし今後は一転して、2018年は24万坪、2019年は37万坪と、2年にわたって大量供給が続く。空室率は2017年に過去最低水準の1%台に低下したが、2018年中は5%前後で推移しそうだ。
さらに、2019年には8%台まで上昇すると予想する。それでも、このエリアの実質賃料は2年間で2%程度上昇すると見込む。というのも、このエリアは幹線道路網が発達しているため配送先へのアクセス性が良く、需要が安定している。したがって、大型の供給がなされれば、集約や拡張などの需要が喚起されやすく、今後2年間の新規需要の総量は40万坪を優に超える予想である。このことが、賃料水準を下支えすることになろう。
圏央道エリアの2016年末時点のストックは約40万坪であった。それに対して新規供給は、2017年が11万坪、2018年は16万坪と、2年間で2016年末時点のストックの70%近くに及ぶ見込み。そのため、空室率は2018年Q4にかけて26%前後まで上昇すると予想される。2019年に入ると、竣工が予定されている開発計画は今のところ限定的。それでも空室率は高止まりとなり、実質賃料は2019年にかけて軟調に推移しよう。
都心からの距離が遠いことや雇用懸念により、他のエリアに比べて需要が弱いことは否めない。ただし、人材採用で問題が少ないと考えられる立地では新たに進出を検討する企業もみられる。中長期的には、自動化設備の普及によってこのエリアの評価が向上する可能性もある。
[図表2]首都圏実質賃料指数