今回は、補助金申請に役立つ「自社の商品・サービス」の明確化について見ていきます。※本連載は、戦略コンサルタントとして地域活性、事業再生、販路拡大、補助金活用など幅広い分野で企業経営者に戦略指導を行う辻・本郷 ビジネスコンサルティング株式会社専務取締役・若狹清史氏の著書『創業補助金』(東峰書房)の中から一部を抜粋し、創業時の補助金申請に必要な事業計画書の作成方法について解説します。

「自社独自の強み」があるか?

●何を提供するか?

 ウリは何か……

 

商品・サービスなど、「何を」提供するのかを具体的に決定するのは当然のことです。さらに一歩踏み込んで考えておくべきことは、他店に負けない一番の「ウリ」は何かを決めることです。

 

例えば、コンサルタント業であれば、クライアントへの提供価値は何であるかを考えます。どんな手法で、報酬はいくらで、施策を進めるのに何ヶ月かかって、それによってクライアントは何を得るのか? 高いお金を払ってまでも得るものは何なのかを考え抜くことです。

 

ありがちな失敗例は、客観的に見て「何となく」それを提供しようとしているような状態です。経験を活かせば「何となく」コンサルタント業ができるのではないか等です。「何となく」、すなわち考えが浅い状態で起業してうまくいくほど甘くありません。

 

そのようにならないためにも、提供しようとしている商品・サービスについて詰めが甘い点がないかどうか、専門家などの第三者に起業前の早い段階で客観的なチェックをしてもらうことをオススメします。

 

 

●商品、サービスの内容は何か・・・

 Who, What, Howの3つの要素を書き出してみましょう。

 

・Who:あなたの商品を買って、または利用してメリットを受けるのは誰でしょう?

・What:そのターゲットに対してどんなメリットを提供することができるのでしょう?

・How:どうやったら、お客様にそのメリットを受け取ってもらえるのでしょう?

 

 

自社の強みを最大限に活かすには・・・

 

先行する他社がいる市場に、初心者として参入するわけですので、一瞬で打ちのめされないよう念入りに練った準備と対策をして挑むことが必要です。そのためには競合他社の分析が必要不可欠です。他社に勝つために、自社の強みと弱みを見つけます。自社の強みを活かすことで他社との差別化を図ることができれば勝ち残ることができます。さらに、通常期待される以上の付加価値を付けた商品・サービスを提供できれば、ライバル会社よりも優位に立って事業を行える可能性が高まります。

 

大切なのは、自社独自の強みはあるかということです。「他社ではダメ」という認識を消費者に植え付けることで他社との差別化を図るのです。提供する商品・サービスに特徴がなければ、価格による競争に巻き込まれてしまいます。

 

 

■差別化できる要素は?

 

・老舗有名店Aで15年修業した実績

・信州産を中心に信州そば、天ぷら等に合った食材が仕入れられる食材調達力

・自家製だしやそば粉の割合、こね具合など独自のレシピ

・時期や湿度に合わせた水加減など、最高なのど越し、風味を引き出す仕込み

・3種類の異なるそばの提供により、他店では味わえないそばの風味を提供する

・手打ちによる熟練技

・これらにより他店では味わえない信州そばが提供できる

 

 

食材のこだわり

 

取り扱う食材はすべて信州産の食材を用いる。そば粉に関してはそば畑で育てたもので、動物性肥料は一切あたえず、100%植物性堆肥で無農薬栽培し、そばの香りの質を求めている。そば粉にこだわっているため、そばのコースとして

 

①生粉打ちそば・・・そば粉100%を水だけでこね、打ったもの

②かわりそば・・・そばの実のでんぷんだけに季節の素材を打ち込んだもの

③あら挽きそば・・・そばの実をあらく挽いて、少しの小麦粉をあわせて打ったもの

 

の3種のそばを順番に提供する3種そばコースを用意している。それぞれのそばが茹で上がってすぐの状態で提供できるよう、お客様の食べている状況を把握しながら、調理を進める。

 

お酒へのこだわり

 

当店のそばや季節の天ぷらにあった日本酒を多く取り揃えていく。長野県内の酒蔵で作られた日本酒の提供を行う。

形状など目に見える情報のほか、付随する価値も重要に

●商品・サービスの価値について掘り下げてみましょう。

 

①商品自体が持つ価値

お客様が受け取るはずである直接的なメリットを考えます。お客様にとってのメリットは、不のつく単語を思い浮かべることで見つけることができます。

 

(例)

 

②付加価値

お客様は商品そのものの価値よりも、サービスなどの商品に付随する付加価値を求めて、商品やサービスを購入することがあります。

 

③時間価値

お客様にとっての最適な時間間隔やスピード感覚を分析して、お客様が求める時間価値を提供していくことが重要です。忙しいお客様にとっては24時間対応やタイムリーな対応にこそ価値を感じてもらえることもあります。人々の生活スタイルが変化したことで、時間価値の重要性はますます高まっています。一方、時間に希少性がある時代だからこそ時間の経つのを忘れて、ゆったりとすごす贅沢な時間にも価値が生まれるのです。

 

④安全価値

安全性は、お客様が商品やサービスに求める価値基準のひとつです。人々は情報に対するセキュリティの問題などに価値を見出すようになりました。また、添加物や遺伝子組み換え食品による食の不安、放射能事故による健康被害に対する不安にも敏感になっています。

 

⑤ブランド価値

お客様は商品やサービスに対するイメージやステータス・シンボル、愛着といったものにブランド価値を見出す場合もあります。ブランドとは、この商品は絶対に自分を裏切らないという信頼感のことを言います。ブランドを構築するのは並大抵のことではありませんが、一度認知されたブランド価値は、あなたの会社の利益獲得に最大限の貢献をするでしょう。

 

商品の内容は、単に商品の形状や性能など目に見える情報だけではなく、商品が内在している目に見えない価値や商品に付属して発生する価値についても考えてみましょう

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    本連載は、2016年9月21日刊行の書籍『創業補助金』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

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    若狹 清史

    東峰書房

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