理念なき会社に発展はない…顧客目線でのコンセプトを
補助金申請や融資審査のために作ることが多いと思いますが、直接必要性に迫られていなくても作りましょう。なぜなら、一大決心をして起業しても、なかなか事業がうまくいかないケースもあります。その要因は様々ですが、その多くは事業計画書を作成せずに無計画に自分の思い入れだけで起業してしまったケースや、事業計画書の作成において検証が甘かったケースがあります。事業計画書の作成は、起業を成功させるための通過点なのです。
事業計画書を書く最も重要な目的は、自分自身で事業内容の細かいところを確認することです。誰に、何を、どのように、提供するのか具体的に書いてみましょう。苦労しながら、何度も何度も書き直すことで、事業の方向性を客観的・論理的にチェックすることができるのです。事業の細かいところや数字面の検証をすることで、事業計画書を書き上げる頃には、事業の方向性が明確になり、自分の夢の実現に向けた第一歩を自信を持って踏み出すことができるようになっているはずです。
●事業コンセプト※の重要性
30秒以内で説明できるくらい明確に整理しわかりやすく「ウリ」をひとことで表します。ウリとなるものは、他との違い、優位性、付加価値等についてシンプルに説明したものです。あらゆるシーンで相手の印象に残るようなインパクトがあり、誰が聞いても理解できるような説明が求められます。
※コンセプト・・・概念のこと。簡単に言うと全体の元となるおおまかな考え方のこと。
まず創業の動機(始まり)と創業の目的(終着点)を明確にします。あなたが起業したいのはなぜですか? お金持ちになりたい、安定した暮らしを手に入れたい、従業員を幸せにしたい、世の中の役に立ちたい・・・その答えは人それぞれだと思います。正解が何かなんてありません。
ただ、原資が税金である創業融資、補助金の交付の場合は別です。お金儲けが目的だとしたら、自分のお金だけで始めればいいことです。税金を使ってお金を調達するにははっきりした理由が必要になるのです。
そこで重要になるのが「顧客目線」です。あなたが始める事業によって、お客様のニーズが満たされたり、不満が解消されたり、世の中にどんないい影響をもたらすのでしょうか。顧客目線で考えてみてください。さらに「理念なき会社に発展はない」という事実を心にとめておいてください。目的や将来目指す方向に礎となるような理念があることで、一本筋が通ってぴしっとした会社が成長していくものです。
[図表]
職歴重視の創業融資では自身の強みを明確にアピール
●経歴を書くとともに、自分の長所を最大限にアピールする
自分の経験やノウハウ、技術を明確にします。創業融資の場合は通常の融資と違い、過去の経営実績を検討材料にできないため今までの職歴が非常に重要視されます。日本政策金融公庫であれば、今回創業する事業内容に関連する職歴が6年あることがひとつの目安です。
経験は年数だけではなく、事業に携わった中身を重視します。大切なのは自分の経歴について、経験、ノウハウ、知識、資格など自分のやってきたことや長所を最大限にアピールすることです。自分以外には容易に経験できないこと、誰にも負けない強みや役割や経験年数、どんな仕事を経験してきたのか振り返りながら、書きましょう。
●3つの能力で強みを見つける
1、仕事を遂行するための技術力
2、個人の資質に属する他社には真似のできないスキル
3、経験の中で蓄積した無形のノウハウ
・技術・・・品質に関する誇れる能力のこと
(例)特許権、知的財産、壊れにくい、精密である、質の高い製品を作れる等
・スキル・・・努力し、身につけてきた能力のこと
(例)コミュニケーション能力、営業力、交渉力、クロージング能力等
・ノウハウ・・・学習してきた経験値のこと
(例)資材の調達ルート、品質管理の方法、広告宣伝の知識、経営能力等
例1 飲食店
(株)A社にて2期連続で全店1位の売上高を達成。以降店長に就任し、最後はエリアマネージャーとなる。その後居酒屋○○を全国展開している(株)B社に入社。8ヶ月で店長に就任し、売上高対前年比180%を達成。以降3店舗にて店長を務める。
例2 建設業
(株)C社にアルバイトとして主に土木工事の現場を担当する。2年後、工事技術の高さと現場判断能力の高さに評価をもらい、正社員となる。その後数多くの現場を担当し、現場統括リーダーに就任。安定した工事技術の提供に貢献する。