前回は、中小企業ならではの経営戦略について紹介しました。今回は、小さな工場が「新たな事業」を生み出すことに成功した事例を見ていきます。

セルフクリーニング塗料が、大気汚染対策の環境商品へ

現在TOTOオキツモコーティングスとして、光触媒塗料事業は私の会社の大きな柱として育っていますが、この事業の種は1978年のオーブンレンジ用に開発したセルフクリーニング塗料です。

 

耐熱塗料で取引のあったS社から相談され、触媒を利用したセルフクリーニング塗料を開発しました。やがてそれが脱臭塗料・触媒塗料技術へと開花していくのです。しかし、その全ては小さな種の一つひとつでした。

 

1992年に当時の通産省工業技術院資源環境技術総合研究所との共同研究から始まった光触媒塗料です。

 

当時技術部長だった沖田が中心となり開発を進めました。沖田は物理学が専門で研究肌です。1995年には通産省の性能目標を達成、1996年には空気浄化装置の特許を出願。日本経済新聞などでも、実用化に向け画期的な新技術として紹介され、一躍脚光を浴びます。

 

1997年には日本でCOP3が開催され、環境意識が高まりました。ちょうどこの年、光触媒塗料が東京・板橋区のガードレールや遮音壁に採用されます。

 

こうして大気汚染対策の環境商品として生まれたのが「エコーティオ」です。数々の学校や公共建築に採用されていき、光触媒塗料は大きく期待されました。

パートナー選びも中小企業の成長に必要なスキル

さらに省エネ、断熱塗料として、工場設備に塗布し、断熱・遮熱効果を発揮して、200℃までの耐熱性を有する「リエナ断熱塗料HIP」においては、パートナーとの提携がありました。

 

大きな市場を目指す場合にはパートナーシップが不可欠です。しかもその状況に応じてパートナーを厳選しなければ、互いに食い合ってしまって良好な関係は築けません。

 

それもまた私の会社のDNAに流れる経営戦略であり、中小企業が大きく羽ばたくための必要不可欠なノウハウだと思っています。

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    本連載は、2016年10月14日刊行の書籍『世界トップシェアを勝ち取った田舎の小さな工場の奇跡』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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    山中 重治

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