「訴訟大国」米国ならではのLLCを利用した手法
米国不動産に投資する場合、現地に米国LLCを設立して、そのLLCに不動産を持たせる例がよくあります。その主な理由は、米国の賃貸用不動産等を直接保有すると、テナントなどからの訴訟リスクを抱えることになるためです。万が一、訴訟という事態となってもLLCレベルで食い止められます。訴訟大国米国ならではの手法ともいえます。
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このLLCとは「Limited Liability Company」の略で、通常は有限責任会社と訳されます。法律上は法人格のある会社、税務上はパートナーシップというハイブリッド(複合的)な組織がLLCの性格です。選択によって法人扱いもでき、その法人自体ではなく、各メンバーに課税されるパートナーシップの扱いも可能という存在です。この選択方式がチェック・ザ・ボックス規則です。ただし、日本居住者(法人および個人)がLLCのメンバーの場合、日本の国税庁の見解では、米国LLCは原則として外国法人とされます。
さて、米国LLCにおいてパートナーシップ税制を選択すれば、マネジメントに参加でき、なおかつ米国の申告では、初期の損失を出資者の負担として税金支払いを繰り延べることができます。LLCにはメンバー数の制限がありませんし、外国人や外国会社などもメンバーになれ、業務執行にも加われます。またメンバーがひとりだけというLLCも可能です。
LLCを利用した投資ではキャピタルゲイン狙いが中心
しかしながら日本の税制においては、LLCはあくまで法人扱いです。日本の個人はLLCの不動産所得による赤字を他の給与所得と相殺できるメリットが受けられません。もっとも、法人の場合も子会社の損失をそのまま日本の親会社の損失にはできませんので、その点では同様です。
したがって、投資の目的は不動産のキャピタルゲインを狙うことが中心となります。ただしその場合も、日本でまず不動産投資会社を設立し、その後米国に100%子会社のLLCをつくるか、米国にLLC以外の会社(Cコープといいます)を設立し、その傘下に投資物件ごとのLLCをつくることが一般的です。
前者のケースでは、米国LLCがその不動差を売却して譲渡益を得た時点で米国での法人税を納めます。その後LLCが解散し、残った利益を日本の親会社へ送金する際には、米国の源泉所得税は不要です。また親会社の受け取る清算配当は95%非課税の対象となります。一方、後者の場合は傘下のLLCが法人を選択すれば、米国Cコープを親会社とする連結納税制度(80%以上の所有)の適用が受けられ、米国法人税の節税が可能となります。
なお、同じ米国でも、アラスカ、コロラド、デラウエア、モンタナ、ネバダ、ノースダコタ各州のLLCやトラストは、米国非居住者にとって秘密保持が約束されるタックス・ヘイブンといえます。銀行等の預金利子、一定の国債やポートフォリオ債からの金利は、米国非居住者なら非課税で、無記名にすることもできます。非課税ですので米国連邦税の申告も不要であり、法人のオーナーの履歴も管理されません。
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デラウエア州やアラスカ州、ネバダ州はそれぞれの州法で資産保全トラストが設立できますし、開示も不要です。なかでもネバダ州に関しては、法人、個人を問わず州の所得税はありません。またネバダ州、ワイオミング州には無記名株式制度があり、オーナー情報は非公開とされます。