前回は、無税国、低税率国、国外源泉所得非課税国、租税特典国に法人を設立するポイントなどについて説明しました。今回は、「配当金非課税制度」の概要と活用方法を見ていきます。

外国子会社からの配当には配当金非課税制度が使える

外国で、課税済みの利益から分配される外国子会社からの配当には、配当金非課税制度を利用できます。これはその配当が日本の親会社の所得に合算され、二重に課税されることを防ぐ税制です。

 

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配当金非課税制度を利用した親会社レベルでもっとも効果的なスキームは、配当への源泉税がなく、かつ法人税率の低い国の外国子会社から配当を受けるパターンとなります。タックス・ヘイブンにある外国子会社からの配当を日本親会社が受け取った場合、その5%は費用とみなされ、残りの95%分についての法人税が非課税となります。ただし、現地での配当にかかる源泉所得税は、日本親会社の損金(経費)になりません。

 

つまり新規にタックス・ヘイブン子会社を設立する場合、タックス・ヘイブン税制の適用除外規定を満たせば、配当の95%は非課税となると考えられます。繰り返しになりますが、現地で配当課税される源泉所得税は日本親会社の損金(経費)にはなりませんから、子会社設立に当たってはこの源泉所得税のない、または税率の低いタックス・ヘイブンを選択すべきです。

 

また外国には、配当金支払いが法人の費用(損金)になる国もあります。たとえば、オーストラリアの会社では、優先株式の配当が同国の税務上は一定の条件のもと、費用(損金)扱いになります。この優先配当を受け取った日本の親会社は、優先株式の配当が日本の法人税法上で配当と認識できるものであれば、95%分は非課税です。

 

オーストラリアの法人税率は30%で決して低くはありませんが、優先株式配当の費用計上で法人税額を減らせますし、配当を受け取る日本親会社も95%非課税の恩恵を受けることが可能となるわけです。

 

ただし、こうした費用(損金)扱いとなる配当(オーストラリアに加えブラジルなども同様)の非課税扱いは今後改正されるかもしれません。

知的財産を活用したグローバル節税法とは?

次に、特許権や実用新案権、ノウハウなどの知的財産権の開発・保有会社で、それに関連した事業を行っている法人のケースを考察します。同種の開発会社にかかわる知的財産権のライセンス収入や売却益についての検討が中心です。

 

このケースでは、タックス・ヘイブンに知的財産保有会社を設立する方法が有効です。

 

その新設会社に知的財産権をそのまま売却すれば譲渡益に法人税がかかります。課税金額は、譲渡収入−原価(開発研究費+譲渡費用)となります。開発研究費がすでに経費(損金)処理されていれば、原価は譲渡費用だけになります。

 

次いで、譲渡価格(時価)をどう計算するかという点が重要になります。移転価格税制上の詳細な議論もありますが、たとえば開発に要した費用と同程度、または一般に適正と思われる価格で譲渡したとします。この知的財産権が後々、多額のロイヤルティ収入を生むことになっても、譲渡時点における売却価格さえ適正であれば、後から過去にさかのぼって税務当局が課税するには相当の困難が伴うことになります。

 

また、譲渡ではなく現物出資とする方法もあります。知的財産そのものを資本金の代わりに出資して、子会社を設立する方法です。ただし、これは国外現物出資に当たるので無税(税制適格)にはなりません。時価での譲渡と考えられ、譲渡益には法人税がかかります。もっとも、親会社に大きな赤字(繰越欠損)があれば、譲渡益と相殺され法人税は発生しません。この方法には、次のような利点があります。

 

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現物出資後、タックス・ヘイブンの知的財産保有会社は、日本の会社の子会社になります。子会社には、日本親会社から知的財産権の使用によるライセンス料が払われますが、その支払いは経費(損金)となり節税でき、一方、子会社には利益がたまっていきます。その分を配当として日本に還流させる際に外国子会社配当の免税措置を使えば、日本で親会社の受け取る配当の95%は課税されないのです。

本連載は、2014年10月1日刊行の書籍『究極のグローバル節税』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。
本連載の内容に関しては正確性を期していますが、内容について保証するものではございません。取引等の最終判断に関しては、税理士または税務署に確認するなどして、ご自身の判断でお願いいたします。

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古橋 隆之 + GTAC

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