依然として「内部留保」を溜め込む民間企業
前回の続きである。景気先行指標である民間設備投資はどうだろうか。
1995年から2015年にかけての年平均成長率はマイナス2.1%と低水準である。特に1998年を境に直近年まで民間企業の投資意欲は乏しいままだ。
財務省が2017年9月に発表した2016年度法人企業統計によると、企業が事業活動から得た利益から株主への配当などを差し引いた利益剰余金(ただし、金融業、保険業を除く)は406兆2348億円と過去最高を更新した。
日本経済は回復基調にあると言われるが、企業は依然として内部留保を溜め込み、リスクマネーは市中に回っていない。新成長分野が見出せなければ、投資意欲は冷え込み盛り上がりに欠けるだろう。
全世代で購買意欲は徐々に低下…消費金額はさらに減少
日本の人口動態にも変化が生じ始める。高齢化に伴って総人口は2020年をピークに減少に転じると予測される。また、長期的なデフレ不況によって賃金の伸び悩み、日本の貯蓄率を下支えしていた中間層も崩壊。生活水準が最低ラインを満たすことができない最下層も出現する。その結果、既存の税金制度の適用が難しくなり、不平等さが目立ち始めることになろう。
また、消費行動にも変化が生じるはずだ。企業による環境問題への取り組みや大量生産、大量消費型の現行の社会経済システムへのアンチテーゼを背景に、環境や社会貢献への意識の高まりから若い世代は大量消費社会を経験している現役世代と比較して、モノを購入しない傾向が強い。
デフレ不況下にて、モノを持たない「ミニマリスト」という価値観の消費者も現れた。加えて、企業・店舗などに対して理不尽な要求をするモンスター消費者の誕生など買い手の交渉力が強まり、サービスやモノを共有する売り手の立場は弱くなっている。
また、スマートフォンの普及により経済活動は効率化していくに違いない。例えばコンビニが冷蔵庫の変わりとなり、TVや音楽、ゲームといったエンターテイメントもスマートフォンで代替が可能になるなど、サービスの一層の充実化が進む。加えて、シェア(共有)という概念の広がりから、民間部門の消費金額は減少していくだろう。
人々の働き方も変化する。「ブラック企業」とか「搾取される労働者」といったイメージが、勤労意欲を低下させていく。好奇心旺盛かつリーダーシップのある高額所得者とその他に二分化し、収入の格差が生じる。
この話は次回に続く。