良い会社を作るには「枠組みだけの人事制度」ではダメ
ある程度の従業員を抱える中小企業であっても、人事評価制度を整備していない企業は少なくありません。制度そのものがない、あるいは形の上では整備されていたとしても十分に機能していないケースが多く、実際には社長自身が個人の裁量で評価や昇給昇格を決め、その基準なき決定に社内で不満が鬱積しているケースはよく耳にします。
私がかかわる中小企業も同様に人事評価制度が未整備の会社が多く、コンサルティングの一環で、私が人事制度や採用活動のプランニングをすることがよくあります。
中小企業のオーナーや事業再生を担う専門家にも理解してもらいたいのですが、人事制度を作る時には、人事制度という枠組みだけを考えていたのでは、決して良い会社にはなりません。
また、広義の人事制度にはリクルーティングも含まれますが、近年では、マーケティングやPRの考え方がないと上手くいかなくなってきています。サービス業を中心になかなか新卒社員を確保できないと嘆く中小企業は毎年増えています。
そのような厳しい採用活動の中、自社を選んでもらうためには自社の価値を上手く情報に載せる必要があります。マイナビに登録したから安心だというような時代はとうに過ぎているのです。マイナビを使うのであれば、どんな情報をどのような表現で伝えるかで会社説明会への参加希望者数は大きく変わります。
人事専門のコンサルタントの多くが専門家として人事問題に対処し、人事制度を設計します。しかし、人事という一つの専門分野だけからの思考で本当に良い会社になるでしょうか? 部分最適も良いところだと思います。
ここに書いたように、ブランディングのノウハウや、会社の価値を上手く伝えるマーケティングコミュニケーション能力、PR企画力などの複合的な知識がないと人事制度の設計も上手くいかない時代なのです。
「自社の社員」に向けたブランディングも実施すべき
例えば、ブランディングを志向するような中小企業においては、ブランディングと人事制度は相互に密接に関連します。ブランディングと言えば外向きのブランディング、つまり顧客等の企業の外部に対して、自社を好きになってもらうための一連の活動だと誤解している経営者が非常に多くいます。
しかし、よく考えてみてください。自社の社員に好かれていない会社を、外部の人が好きになるでしょうか。そのような状態で外向きのブランディングを実施しても上手くいかないでしょうし、短期的に成功してもすぐにメッキがはがれてしまいます。
SNSなどがここまで広く社会に浸透した現在では、社内と社外の境界線はないものだと考えたほうがいいのです。
外側に向けたブランディングを実施するならば、同様に内側つまり社員に向けたブランディング活動も同様に重要で、外向けのブランディングと内向けのブランディングを同時並行で実施しなければなりません。
人事評価制度も、自社のブランドを作っていくためには、このような社員に育ってほしいという思いが制度の中に織り込まれる必要がありますから、ブランディングと人事制度は切っても切れない関係にあります。