前回は、企業の人事戦略が「会社のブランディング」の成否を決める理由を説明しました。今回は、人事評価制度の作成をする際、重視すべき「評価項目」とは何かを見ていきます。

「成果育成型人事制度」で重視される4項目とは?

私は再生案件に携わる中で人事評価制度の設計をすることがよくあります。その際、先にも述べたようにブランディングとの兼ね合いから、将来どういう社員に育て上げるのかという視点、つまりどのような評価項目を設けるのかがとても重要なテーマとなるのです。

 

基本的に、日本という成熟社会において、毎年右肩上がりに会社の利益が増えることを前提とした人事制度は作るべきではありません。全ての社員の給与ベースを一律に上げることは不可能です。そこで、成果を出した社員には厚く応える一方で、そうではない社員には応えないというのが大きな方針になります。

 

人事評価制度における具体的な評価項目は、大別すると一般的に次の4つの区分になります。

 

①期待成果:会社から期待される成果の達成度合い

②重要業務:期待成果達成のために、会社が従業員に最も期待する仕事のやり方

③知識・技術:重要業務達成のために、会社が従業員に期待する知識や技術

④勤務態度:規律性や積極性など、会社が従業員に期待する仕事に向き合う姿勢

 

こうして4つの区分で総合的に評価する制度を「成果育成型人事制度」と呼びます。実績を重視する成果主義でもなく、旧日本型経営の年功序列でもなく、会社が望ましいと思う社員を育て上げ、結果として会社の業績(成果)が上がることを目的としています。

 

4つの大項目は各々が独立しているのではなく、「期待成果」の達成には「重要業務」で示される仕事のやり方が必要とされ、その「重要業務」の遂行に必要な知識等が「知識・技術」で求められるという形になっています。そして最後に、上記の3つの項目に臨むための姿勢として求められる項目が「勤務態度」です。

評価項目を絞ることで、社員の成長を早める

こうした構造を理解すると、評価項目として評価される対象はすごく限られたものになることが分かります。上から下へ同一のことを評価する構造になっていますので、個々の具体的評価項目としては16~20個程度あっても、実質的には4~5個くらいしか評価できないのです。

 

そして4つの大項目をブレイクダウンして、各々4個程度の具体的評価項目を設定します。それ以上の評価項目を列挙してしまうと、評価される側からすれば、自分はどの項目に重点を置けば成長できるのか、会社に貢献できるのかが分からなくなり、日常の仕事をしながら特に意識するべき点にフォーカスできないため、成長が遅くなってしまいます。

 

言い換えれば、会社から期待されている点は現時点ではこれだけなのだ、今はこれさえ集中してやればいいのだと理解させることで意識が集中し、成長が早まります。

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    本連載は、2017年5月26日刊行の書籍『「事業再生」の嘘と真実 』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

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