圧倒的な雇用を生み出す「イノベーション産業」
米国のここ数年にわたる底堅い経済成長は、「イノベーション産業」によって支えられているものだといえます。
カリフォルニア大学バークレー校教授のエンリコ・モレッティ氏の実証によれば、製造業の生む雇用が1.5倍なのに対して、イノベーション産業が生む雇用は5倍であり、そのうちの2割がプロフェッショナル、3割がサービス業となり、さらに所得面では、製造業中心の都市にいる大卒よりもイノベーション産業中心の都市にいる高卒が上を行く、という結果を得ています。
ところで、イノベーション産業とは何でしょうか?
イノベーションとは、既存のものとは異なる新しい技術や考え方から、新たな価値を生み、社会的に大きな変化を起こすことを指します。
20世紀は自動車製造がイノベーション産業でした。同様に、コンピュータ製造業も、導体産業もイノベーション産業でしたが、その雇用はそれぞれ1980年後半、2000年にピークを打っています。
モレッティ氏の著書『年収は住むところで決まる』(2014年、プレジデント社) によれば、現在雇用を生んでいるイノベーション産業は、インターネット産業、ソフトウエア産業、サイエンス系研究開発産業、創薬産業、ロボティクス、先端医療機器、エレクトロニクスであり、また、エンターテイメント、工業デザイン、マーケティング、金融の一部もそれに含まれると考えられています。
上記の「雇用を生む産業」が発生・集積している地域として、多くの方が思い浮かべるのは、カリフォルニア州のサンフランシスコ・ベイエリア、シリコンバレーではないでしょうか。
イノベーション産業の「ハブ」としての機能が発生し、特定地域に集積していく理由は、以下の3点に集約されます。
①高学歴の人材確保
サンフランシスコ・ベイエリアには、スタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、カリフォルニア大学サンフランシスコ医学校など、全米でもトップレベル大学が集まり、優れた教授陣のもとで優秀な人材が輩出されています。そしてまた、全世界の高学歴な人材が当地を目指します。シリコンバレーの人口の30%はインド、中国を中心としたアジアからの移民が占めています。
②ビジネスのエコシステム
シリコンバレーのメンロパークには、「スタートアップ」に欠かせない資金調達の役割を果たすベンチャーキャピタル群(代表的なものにセコイヤキャピタルがあります)が集積しています。また、弁護士、会計士、コンサルティングファームも、スタートアップに対するストックオプションを見返りとして、起業家たちへのアドバイスに応じています。彼らは起業家たちに対し、自分たちのオフィスから車で20分以内の場所での起業を勧めます。
③知識の伝播
創造性豊かな人たちが集まり、交流することで、お互いに学びあう機会が生まれてイノベーションが活性化します。イノベーションとは、真空地帯に突然発生するものではないのです。
集結する企業と人々に影響を受ける不動産需要
実際のところ、サンフランシスコ・ベイエリアには、全米でも屈指の時価総額を持つIT企業――シリコンバレーを代表するアップル、グーグル、フェイススブックの3社、時価総額合計1兆4764億ドル=181兆6000億円(2015年11月24日終値ベース)――などが数多く存在し、人・物・金を引き寄せるパワーを十分に発揮しています。
これらのことから、サンフランシスコ・ベイエリアは、非常に活気があり、今後もさらに有望な企業が集まるだけでなく、それら企業に関係する所得の高い居住者の転入が見込まれる地域であるとがわかります。
不動産価格というものは、ほぼ需給関係で決まります。米国では、収益不動産は物件から生まれるキャッシュフローの多寡が価格算出の尺度となっているので、供給が限定的で需要が多いマーケットでは傾向として家賃が上昇し、価格も上がるのです。
住居系収益不動産の需要はそのマーケットから半径30-60分内で通勤可能な産業エリアの質とボリュームで決まります。
したがって、サンフランシスコ・ベイエリア、ならびにシリコンバレー地区の不動産は、米国でも有数な投資物件があるといえるでしょう。