今回は、相続した実家で賃貸経営を始めても上手くいかない理由を見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

内装工事や水周りの取り替えに高額の費用が…

前回は、不動産は「簡単には売れない」ということを説明しました。それなら「貸して家賃をもらおう」と考えるのが世の常。でもそうはうまくいきません。

 

築年数の古い空き家などを貸そうという場合には、内装はもちろんですが、古くなった配管や水回り(風呂、トイレ、キッチンなどの設備)を取り替えたりする必要があります。最低でも200万円くらいはかかってくる場合が多いのです。それは相続した古いマンションでも同じです。

 

相続した不動産=土地が都心やその近郊であれば、「とことん安ければ買う」という人がいることもあります。それは建売業者やマンションデベロッパーなどの「プロ」による土地の仕入れという場合です。そこに戸建てやアパート、マンションを建てて利益を乗せて販売する人たちです。十分利益が見込める土地であれば、安くすることによってプロが買ってくれる場合があります。

 

ところが賃貸の場合は、「ボロボロの内装で設備も使えるかどうか分からない。だから家賃は安いですよ」と言われても借りる人はまずいません。

人口減少が進むなか、借り手は簡単に見つからない

実家の戸建てやマンションを、高額なリフォームをして賃貸に出す前に考えなければならないことがあります。それは「借りる人がいるのか?」ということです。

 

ここ数年は「2015年からの相続税増税」に備えて、節税目的でのアパートやマンションの建設ラッシュの様相を呈していたことはすでに述べましたが、それ以外にも「中国経済の先行き不安を背景とした中国人富裕層による日本の不動産の爆買い需要」も目を見張るものがありました。

 

そういった投資、または投機需要を背景にして、ハウスメーカーやマンションデベロッパーが競い合うように賃貸アパートやマンションを建てていたのです。

 

でもよく考えてください。日本の人口は減り続けているのですから、「新築で建てたアパートに借り手がつかずにガラガラ」というような光景も珍しくはないのです。

 

相続した実家の戸建てやマンションを数百万円のリフォーム代をかけて賃貸に出すとしても、「新築なのにガラガラ」の賃貸アパートやマンション、それほど古いわけではないが競争力の落ちた中古アパートやマンションなどと借り手の奪い合いをするわけですから、「築40年、フルリフォーム済み、割安です」といっても、よほど立地に恵まれていなければ借り手は簡単には見つからないのが現実なのです

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

藤戸 康雄

時事通信出版局

日本全国で約820万戸の「空き家」「所有者不明の土地」が九州の面積以上! 実家や土地は、もはや「負動産」不動産は捨てられない! 2015年1月から相続税の基礎控除が大幅に縮小され、課税対象となる人が増えました。「実家…

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