今回は、相続した実家の取り壊し・売却を困難にする「土地の境界確定」の問題を見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

土地の登記簿と実際の面積に、相当な乖離があることも

前回の続きです。

 

それなら、建物は取り壊して更地として売ればいいじゃないかと考える人もいます。ですが、ボロボロの木造家屋であっても取り壊し費用には数百万円もかかる場合があります。そして土地を売るときの最大の難問は「土地の境界確定」なのです

 

買う人の立場で考えてみてください。土地を買うときには「坪当たりいくらで売ります」ということが普通です。土地が何坪あるかで買う値段が決まるわけですから、まずは土地の面積を正確に知る必要があります。

 

土地には登記された内容が確認できる「登記簿」(今では電子データ化されており「登記情報」といわれています)というものがあり、そこには面積が何㎡かが記載されています。これを「公簿面積」といいます。

 

登記簿は電子データ化されているもののそのもととなる面積自体は登記制度ができた何十年も前から受け継いできている情報であるため、実際の面積と大幅に異なる場合があるのです。そこで土地を売買するときには隣接地との境界を確定したうえで、自分の土地の面積を正確に測量して売る必要があるわけです

境界の確定・面積の実測には、大変な手間と労力が…

土地の境界確定はどうやってやるのかというと、「土地家屋調査士」という国家資格者に頼んで法務局に備えてある各種の資料等の調査を行ってもらい、それに基づいて現地にて関係する土地の所有者の立ち会いの下で確認の承諾を得る手続きが必要となります。

 

ところが、先祖代々受け継いできたような土地の場合、なかには「おじいちゃんの代で隣地との間で塀をずらせだの庭の木の枝を切れだのという紛争があって、それ以来土地の境界については触れることもできなくなっている」というような場合もあります。

 

そのような特殊な経緯がないとしても、自分の土地が増えるか減るかの瀬戸際で、土地の価格が高額な場所であれば話がまとまらない場合もあります。そうなると最後は裁判するしかありません。

 

このように、土地の境界を確定して面積を実測することは、とても大きな苦労と長い時間、そして多額の費用がかかる場合が往々にしてあるのです。「やっと相続が片付いた。さあ売ろう」と思っても、不動産はそう簡単に売ることはできないことがお分かりいただけたでしょうか。

本連載は、2017年11月30日刊行の書籍『「負動産」時代の危ない実家相続知らないと大損する38のポイント』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

藤戸 康雄

時事通信出版局

日本全国で約820万戸の「空き家」「所有者不明の土地」が九州の面積以上! 実家や土地は、もはや「負動産」不動産は捨てられない! 2015年1月から相続税の基礎控除が大幅に縮小され、課税対象となる人が増えました。「実家…

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