今回は、相続における「遺留分」と、遺留分を侵害する遺言を残す場合に重要となる「付言事項」について見ていきます。※本連載は、長年、不動産会社で不動産金融・不動産法務に従事し、現在は相続・不動産コンサルタントとして活躍する藤戸康雄氏の著書、『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』(時事通信出版局)の中から一部を抜粋し、実家の相続について問題点や対策をわかりやすく解説します。

遺留分=「民法で守られている相続人の権利」だが・・・

遺言があっても泥沼相続になってしまう場合として「遺留分を侵害した遺言」というものがあります。遺産分割において遺言がある場合は何にも優先して遺言の定めを尊重すべきとされていますが、民法ではその遺言によっても侵害することのできない相続人の権利が定められています。これを「遺留分」といいます。

 

遺留分は相続人ごとに、「直系尊属のみが相続人である場合は遺産の3分の1」「その他の場合は遺産の2分の1」「兄弟姉妹には遺留分はない」と定められています。

 

遺言は優先されるべきものではありますが、遺留分を侵害した場合には修正される可能性があります。遺留分減殺請求(遺留分を侵害されている相続人侵害している相続人に対して、「侵害した分の相続財産を私に返しなさい」という権利を行使すること)されることがあるからです。

「不公平な遺言」を残すなら、付言事項で事情説明を

しかし、遺留分を侵害するような遺言も決して無効とはなりません。中には、遺留分を侵害していることを分かっていて、遺言の中で「子どもたちは、残された高齢の母親のためにも遺留分減殺請求をしないでください」(このように遺言の中で法的拘束力を持たないメッセージのようなものを「付言事項」といいます)とまで書かれている遺言もあるくらいです。

 

とはいえ、遺留分は遺言に優先することが法律で定められていますので、「遺留分減殺請求をしないでください」という言葉は、お願いであって法的な効力はありません。尊重するかしないかは相続人の意思によることとなります。

 

遺言書が見つかってその内容を知ったときに、単純に財産の分け方だけ書いてあり、何の理由も説明されずに自分の相続財産が法定相続分よりも少なかったとしたら、たいていの人は納得できないでしょう。ましてや遺留分を侵害している(法定相続分の半分に満たない)場合などは、理由が分からなければ「納得できない。遺留分減殺請求権を行使する!」と息巻くことでしょう。

 

遺留分を侵害するような遺言書を残す場合には、付言事項にきちんと「なぜそのような遺産の分割をしてほしいのか」ということを相続人が納得するように書いておくことが絶対に必要なのです。

本連載は、2017年11月30日刊行の書籍『「負動産」時代の危ない実家相続 知らないと大損する38のポイント』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には一部対応していない可能性がございますので、あらかじめご了承ください。

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

「負動産」時代の危ない実家相続  知らないと大損する38のポイント

藤戸 康雄

時事通信出版局

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